剖検例における骨髄形質細胞と血清免疫グロブリンとの関係 計量的・免疫組織化学的研究
剖検例より採取した大腿骨骨髄をもちいて, 組織切片上で単位面積あたりの有核細胞数 (NBMCC) および形質細胞数 (PLC) の算定と, 酵素抗体法による形質細胞内免疫グロブリン型の半定量的計測をおこない, 生前に測定された血清免疫グロブリン濃度との対比をおこなった.血清免疫グロブリン値が正常範囲であり, かつ, 免疫グロブリン異常をきたしやすい疾患でない症例を対照群とすると, 対照群では厚さ3μの切片上でNBMCCは3937±1699/mm2, PLCは39±34/mm2, 形質細胞比率 (PLR) は0.99±0.66%であり, 従来報告されている胸骨・腸骨のPLC, PLRとほぼ一致す...
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Published in | 昭和医学会雑誌 Vol. 44; no. 6; pp. 779 - 790 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
昭和大学学士会
28.12.1984
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ISSN | 0037-4342 2185-0976 |
DOI | 10.14930/jsma1939.44.779 |
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Summary: | 剖検例より採取した大腿骨骨髄をもちいて, 組織切片上で単位面積あたりの有核細胞数 (NBMCC) および形質細胞数 (PLC) の算定と, 酵素抗体法による形質細胞内免疫グロブリン型の半定量的計測をおこない, 生前に測定された血清免疫グロブリン濃度との対比をおこなった.血清免疫グロブリン値が正常範囲であり, かつ, 免疫グロブリン異常をきたしやすい疾患でない症例を対照群とすると, 対照群では厚さ3μの切片上でNBMCCは3937±1699/mm2, PLCは39±34/mm2, 形質細胞比率 (PLR) は0.99±0.66%であり, 従来報告されている胸骨・腸骨のPLC, PLRとほぼ一致する.NBMCCは加齢に伴う減少傾向がみられるが, PLR, PLCでははっきりした相関はみられない.女性は男性よりもPLCが低値をとる傾向がある.血清γグロブリン値 (γ-G) とPLC, PLRは対照群ではPLCの方により高い相関関係がみられ, γ一Gの異常な増減のある場合はPLC, PLRともに相関がより高くなる.肝硬変ではr-Gの増加に伴いPLC, PLRが増加するが, γ-G正常な肝硬変でもPLC, PLRの増加がみられる.PLC/γ一G, PLR/γ一Gは対照群では39.7±32.2, 0.96±0.63であり, 他の群でも大きな差はない.しかし, γ-G正常な肝硬変と多発性骨髄腫では著しく高値であり, 前者では正常形質細胞で産生された免疫グロブリンの異化の亢進が考えられ, 後者では腫瘍化した形質細胞の免疫グロブリン産生能低下による形質細胞1個当たりの免疫グロブリン産生率の低下が推定される.PLCとPLRとを比較すると, 反応性のγ一G変動に対する相関はPLCの方がやや高く, 各群におけるデータのバラツキもPLCの方がより少ない傾向にあり, 骨髄形質細胞の量的異常の指標としてはPLCがより優れていると考えられる.また, 形質細胞の分布の不均一に対する修正は骨髄塗抹標本では難しいが骨髄組織標本においては容易であるので, 従来の骨髄塗抹標本による相対的な算定ではなく骨髄組織標本による絶対数の算定の方がより適当である.形質細胞内免疫グロブリンはIgGが優位でIgA, IgMがっぎ, IgD, IgEは痕跡的であり, κ鎖はλ鎖とほぼ等しいかやや多い.このうち, α, ε, μ, κ, λ鎖のいずれかの異常値を示す症例がみられたが多発性骨髄腫を除いてはpolyclonalであり, 血清免疫グロブリンとの間の関連はみられなかった. |
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ISSN: | 0037-4342 2185-0976 |
DOI: | 10.14930/jsma1939.44.779 |