地方公共団体における発生主義に基づく本年度差額と財政調整基金取崩の関連性 期間衡平性に関する実証分析

地方公共団体は総務省から要請を受け,統一的な基準に基づく財務書類を開示している。しかし,開示された財務書類をどのように活用できるのかはいまだ重要な研究課題である。地方公会計に関する先行研究は,損失報告時において本来必要な税収の増加や歳出の削減ではなく,一時的に基金取崩を用いることで期間衡平性を棄損する可能性を指摘している。本稿は,統一的な基準で開示される純資産変動計算書の「本年度差額」に着目し,本年度差額の損失の大きさと財政調整基金取崩が関連していることを予想する。2016年度から2018年度までの4,115地方公共団体・年度のデータを用いた実証分析の結果,他の要因を所与としてもなお,本年度差...

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Published in会計プログレス Vol. 2024; no. 25; pp. 73 - 90
Main Author 黒木, 淳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本会計研究学会 2024
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ISSN2189-6321
2435-9947
DOI10.34605/jaa.2024.25_73

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Summary:地方公共団体は総務省から要請を受け,統一的な基準に基づく財務書類を開示している。しかし,開示された財務書類をどのように活用できるのかはいまだ重要な研究課題である。地方公会計に関する先行研究は,損失報告時において本来必要な税収の増加や歳出の削減ではなく,一時的に基金取崩を用いることで期間衡平性を棄損する可能性を指摘している。本稿は,統一的な基準で開示される純資産変動計算書の「本年度差額」に着目し,本年度差額の損失の大きさと財政調整基金取崩が関連していることを予想する。2016年度から2018年度までの4,115地方公共団体・年度のデータを用いた実証分析の結果,他の要因を所与としてもなお,本年度差額の損失の大きさは財政調整基金取崩と関連していることを発見した。さらに,このような関係は,一時的な歳入の大幅な減少あるいは歳出の大幅な増加に伴わず,選挙実施の年度であるほど強まること,また物件費の増加が要因であることが明らかになった。本稿は,発生主義に基づく本年度差額に注目し,期間衡平性を棄損する可能性のある財政調整基金取崩と関連性を示す証拠を示した点で公会計研究に貢献している。
ISSN:2189-6321
2435-9947
DOI:10.34605/jaa.2024.25_73