古典的犯罪学理論とエイジェンシーをめぐる社会学的考察 「ソフトな決定論」再訪

本稿は社会学の観点から,古典的犯罪学理論と自由・エイジェンシー概念との関係性について考察するものである.近年離脱研究の文脈において,人間の自由・エイジェンシー概念や行為の目的論的説明を重視する立場と,行為の因果論的説明を重視する伝統的な実証主義・決定論的犯罪学との間で,対立的な議論が交わされている.自由・エイジェンシー概念の身分や所在について考察するために,本稿では主にこれらの議論の基礎を提供した,D・マッツァの理論と彼の「ソフトな決定論」と呼ばれる見解に焦点を当てる.考察を通じて,中和の技術や漂流といった独自の理論的なアイデアを尊重するためには「非行・犯罪行為を説明する活動」への関心を徹底さ...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in犯罪社会学研究 Vol. 48; pp. 23 - 35
Main Author 秋本, 光陽
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本犯罪社会学会 20.10.2023
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0386-460X
2424-1695
DOI10.20621/jjscrim.48.0_23

Cover

More Information
Summary:本稿は社会学の観点から,古典的犯罪学理論と自由・エイジェンシー概念との関係性について考察するものである.近年離脱研究の文脈において,人間の自由・エイジェンシー概念や行為の目的論的説明を重視する立場と,行為の因果論的説明を重視する伝統的な実証主義・決定論的犯罪学との間で,対立的な議論が交わされている.自由・エイジェンシー概念の身分や所在について考察するために,本稿では主にこれらの議論の基礎を提供した,D・マッツァの理論と彼の「ソフトな決定論」と呼ばれる見解に焦点を当てる.考察を通じて,中和の技術や漂流といった独自の理論的なアイデアを尊重するためには「非行・犯罪行為を説明する活動」への関心を徹底させ,その関心のもとで,自由・エイジェンシー概念や行為の目的論的説明を捉え直す必要があることを論じる.
ISSN:0386-460X
2424-1695
DOI:10.20621/jjscrim.48.0_23