経済安全保障と大学 輸出管理法におけるアカデミアセーフガード条項の意義
経済安全保障推進法を受けて改正された省令及び通達により,2022年5月1日から,「特定類型」と呼ばれる3つの型のいずれかに該当する限り,国籍の如何を問わず,居住者であっても,かかる者に対する技術の提供は管理対象となった(み輸出の対象拡大)。これが我が国の大学等の研究機関に与える影響は甚大である。この点米国では,大学内で実施される基礎研究及び教育における技術情報の提供,またそれらを目的とした米国外への技術情報の移転は,輸出管理法の規制対象除外となっている。EUでは,EU域内で行われるものはそもそも管理対象とならないほか,また「基礎研究」の解釈が適切かどうかを判断するために,技術成熟度と産業界から...
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Published in | 研究 技術 計画 Vol. 38; no. 1; pp. 39 - 59 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
研究・イノベーション学会
08.05.2023
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ISSN | 0914-7020 2432-7123 |
DOI | 10.20801/jsrpim.38.1_39 |
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Summary: | 経済安全保障推進法を受けて改正された省令及び通達により,2022年5月1日から,「特定類型」と呼ばれる3つの型のいずれかに該当する限り,国籍の如何を問わず,居住者であっても,かかる者に対する技術の提供は管理対象となった(み輸出の対象拡大)。これが我が国の大学等の研究機関に与える影響は甚大である。この点米国では,大学内で実施される基礎研究及び教育における技術情報の提供,またそれらを目的とした米国外への技術情報の移転は,輸出管理法の規制対象除外となっている。EUでは,EU域内で行われるものはそもそも管理対象とならないほか,また「基礎研究」の解釈が適切かどうかを判断するために,技術成熟度と産業界からの資金提供の普及度という2つの基準が用意され,明確度が高い。そもそも日本のみ輸出規制は工業セクターための規制であるため,主に基礎研究を実施するアカデミア(大学等)に適用するには適していない。法律に設けられた例外措置が学術界一般を念頭においたものとはいえない以上,アカデミアセーフガードとしては不十分である。大学が管理徹底を研究者に求めることで,研究者の過度な自主規制などをも誘発してオーバーコンプライアンスに陥りかねない。経産省と文科省の協働により適切なアカデミアセーフガード条項を制度化するとともに,それを適格に運用する能力を持つ法務機能を充実させる必要がある。 |
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ISSN: | 0914-7020 2432-7123 |
DOI: | 10.20801/jsrpim.38.1_39 |