保育実践と発達支援専門職の関係から発達心理学の研究課題を考える 子どもの生きづらさと育てにくさに焦点を当てて

巡回相談員として保育実践に関わってきた経験から,最近,保育現場では,子どもの生きづらさと育てにくさへの支援ニーズが高くなり,それに応じて,支援対象児個人の行動レベルから,関係性と意味レベルを志向する支援の必要性が高くなり,それに応えうる研究課題に取り組むことと,支援実践の必要性を指摘した。巡回相談における主訴から研究課題を立ち上げる例として,「場面の切り替えが難しい」を取り上げ,その構造を分析して仮説的なモデルを提示した。このモデルにおいて,子どもが遊びなどの活動の終了時点で気持ちに区切りが入ることが切り替えにおいて決定的に重要な点であり,単に行動レベルで行動を移行するような保育への支援に疑問...

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Published in発達心理学研究 Vol. 24; no. 4; pp. 484 - 494
Main Author 浜谷, 直人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本発達心理学会 2013
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ISSN0915-9029
2187-9346
DOI10.11201/jjdp.24.484

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Summary:巡回相談員として保育実践に関わってきた経験から,最近,保育現場では,子どもの生きづらさと育てにくさへの支援ニーズが高くなり,それに応じて,支援対象児個人の行動レベルから,関係性と意味レベルを志向する支援の必要性が高くなり,それに応えうる研究課題に取り組むことと,支援実践の必要性を指摘した。巡回相談における主訴から研究課題を立ち上げる例として,「場面の切り替えが難しい」を取り上げ,その構造を分析して仮説的なモデルを提示した。このモデルにおいて,子どもが遊びなどの活動の終了時点で気持ちに区切りが入ることが切り替えにおいて決定的に重要な点であり,単に行動レベルで行動を移行するような保育への支援に疑問を呈した。場面の切り替えの原型は,3項関係にあり,子どもが対象に出会った時の私的な認識や感情体験を対象化して,それを他者と共有することとして理解する必要があることを指摘した。その際,保育者から子どもへの言葉かけが,子どもの時間に区切りを入れて,物語を創りだす。また,保育支援においては,発達において何を価値とするかが問われ,発達心理学の研究者は,価値について自覚的に研究に取り組むことが豊かな保育実践に寄与できることを指摘した。
ISSN:0915-9029
2187-9346
DOI:10.11201/jjdp.24.484