発電用燃料材需要に対する林業事業体の対応 岩手県を事例に

本稿の課題は,岩手県を事例とし,林業事業体が発電用燃料材の需要に対して,いかに対応し素材を供給しているのかについて実態を把握し,その特徴を整理することである。新日鐵住金 (株) 釜石製鐵所の石炭・木質バイオマス混焼発電所に燃料材を出荷している釜石地方森林組合とA社の分析からは次の点が明らかとなった。1点目は,政策の意図に反してパルプ用材を中心とした低質材が燃料材に仕向けられていたことである。その主な要因は,単価と輸送距離によって規定される1日当たりの出荷量の多さであった。2点目は,燃料材はパルプ用材に比べ受け入れ規格が緩く,出荷量の制限が基本的にないなど,林業事業体にとって生産や出荷の管理がし...

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Published in東北森林科学会誌 Vol. 26; no. 2; pp. 67 - 72
Main Authors 滝沢, 裕子, 高野, 涼, 髙田, 乃倫予, 遠藤, 元治, 伊藤, 幸男, 陸, 海璐
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 東北森林科学会 31.10.2021
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ISSN1342-1336
2424-1385
DOI10.18982/tjfs.26.2_67

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Summary:本稿の課題は,岩手県を事例とし,林業事業体が発電用燃料材の需要に対して,いかに対応し素材を供給しているのかについて実態を把握し,その特徴を整理することである。新日鐵住金 (株) 釜石製鐵所の石炭・木質バイオマス混焼発電所に燃料材を出荷している釜石地方森林組合とA社の分析からは次の点が明らかとなった。1点目は,政策の意図に反してパルプ用材を中心とした低質材が燃料材に仕向けられていたことである。その主な要因は,単価と輸送距離によって規定される1日当たりの出荷量の多さであった。2点目は,燃料材はパルプ用材に比べ受け入れ規格が緩く,出荷量の制限が基本的にないなど,林業事業体にとって生産や出荷の管理がしやすい点が燃料材生産を促していたことである。3点目は,燃料材として新たに資源化した部分が少なからずあり,これまで林地残材となっていた材が出荷され,結果として素材生産の歩留まりの向上に寄与していた。
ISSN:1342-1336
2424-1385
DOI:10.18982/tjfs.26.2_67