術前診断が困難だった直径14cmの囊胞性のS状結腸癌肝転移の1例

症例は47歳,女性.突然の右側胸部痛で救急外来を受診し,肝右葉の巨大囊胞性病変の破裂の疑いで緊急入院となった.精査の結果,巨大肝囊胞性病変の他にS状結腸癌を認めた.肝の囊胞性病変は大腸癌肝転移としては非典型的で,肝囊胞腺癌や卵巣癌肝転移などを鑑別に挙げた.腹腔鏡下S状結腸切除を行ったのちに肝切除を行う方針とした.S状結腸切除後に肝囊胞性病変は増大傾向を示し,腫瘍が肝S4や尾状葉に進展していたため,肝S4を一部切除するように肝右葉尾状葉切除を行い,術後経過は良好であった.病理組織検査で大腸癌肝転移と診断した.腫瘍が急速に増大したため腫瘍内部の血流障害が起き,腫瘍の壊死によって液体が貯留し,囊胞性...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 86; no. 2; pp. 289 - 295
Main Authors 林 洋毅, 島村 弘宗, 岡 直美, 加納 拓, 手島 伸, 髙舘 達之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2025
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.86.289

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Summary:症例は47歳,女性.突然の右側胸部痛で救急外来を受診し,肝右葉の巨大囊胞性病変の破裂の疑いで緊急入院となった.精査の結果,巨大肝囊胞性病変の他にS状結腸癌を認めた.肝の囊胞性病変は大腸癌肝転移としては非典型的で,肝囊胞腺癌や卵巣癌肝転移などを鑑別に挙げた.腹腔鏡下S状結腸切除を行ったのちに肝切除を行う方針とした.S状結腸切除後に肝囊胞性病変は増大傾向を示し,腫瘍が肝S4や尾状葉に進展していたため,肝S4を一部切除するように肝右葉尾状葉切除を行い,術後経過は良好であった.病理組織検査で大腸癌肝転移と診断した.腫瘍が急速に増大したため腫瘍内部の血流障害が起き,腫瘍の壊死によって液体が貯留し,囊胞性の画像所見を呈したと考えられた.囊胞性の大腸癌肝転移は非常に稀である.術前診断が困難であった囊胞性の大腸癌肝転移の1例を経験したため,文献的考察を加え報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.86.289