下垂体腫瘍に対する手術適応 機能性腺腫とincidentaloma

下垂体腫瘍, 特に機能性下垂体腺腫およびincidentalomaに対する手術適応について述べる. 下垂体腺腫に対する治療法には手術療法, 薬物療法, 放射線療法があるが, 特に機能性下垂体腺腫では手術療法と薬物療法の選択が重要である. 機能性腺腫のうち成長ホルモン産生腺腫, adrenocorticotropin stimulating hormone (ACTH) 産生腺腫, thyrotropin stimulating hormone (TSH) 産生腺腫では, 薬物療法による根治的治療法がないため手術を中心とした治療計画を立てる. 一方, プロラクチノーマでは根治可能な薬物療法があり...

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Published in脳神経外科ジャーナル Vol. 25; no. 8; pp. 637 - 645
Main Authors 栗栖, 薫, 木下, 康之, 富永, 篤
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳神経外科コングレス 2016
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ISSN0917-950X
2187-3100
DOI10.7887/jcns.25.637

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Summary:下垂体腫瘍, 特に機能性下垂体腺腫およびincidentalomaに対する手術適応について述べる. 下垂体腺腫に対する治療法には手術療法, 薬物療法, 放射線療法があるが, 特に機能性下垂体腺腫では手術療法と薬物療法の選択が重要である. 機能性腺腫のうち成長ホルモン産生腺腫, adrenocorticotropin stimulating hormone (ACTH) 産生腺腫, thyrotropin stimulating hormone (TSH) 産生腺腫では, 薬物療法による根治的治療法がないため手術を中心とした治療計画を立てる. 一方, プロラクチノーマでは根治可能な薬物療法があり, 手術適応は限られる. 成長ホルモン産生腺腫では手術が第1選択ではあるが, 術前のsomatostatin analogによる薬物療法が有用な症例がある. 術直後はinsulin growth factor-Ⅰ (IGF-Ⅰ) が高値であっても, GH値が正常であれば徐々にIGF-Ⅰ低下が望めるため, すぐに再手術や後療法に移る必要はない. 残存腫瘍に対する再手術は腫瘍がトルコ鞍内に限られるものには有用である. プロラクチノーマは薬物療法が第1選択となるが, 薬物療法も根治のためには長期服用が必要である. 長期服用困難な例, 薬剤抵抗性の腫瘍の場合は手術も考慮する. ACTH産生腺腫の場合には, 腫瘍局在を確認することが手術適応を決めるうえで最も重要である. Incidentalomaとして発見される下垂体腫瘍はほとんどが非機能性下垂体腺腫とラトケ囊胞であるが, それぞれの腫瘍で手術の適応は異なる. 非機能性腺腫は緩徐ではあるが増大するため, 特に鞍上部進展を認める例では早晩視機能障害をきたすことが多く, 手術を検討してよい. また, 前頭蓋底や海綿静脈洞に進展している例では治療が困難になることも多く, 早期の治療が望ましい. ラトケ囊胞では囊胞の自然縮小が生じることも認められ, 手術後の再発率の高さから考えても下垂体機能障害がなければ経過観察でよい. 下垂体機能障害は高度になると不可逆的であるため, 下垂体機能障害が軽度でも存在する場合は手術を考慮してよい.
ISSN:0917-950X
2187-3100
DOI:10.7887/jcns.25.637