社会秩序の時間的構成によせて 社会システムの時間論序説

本稿の目的は、ニクラス・ルーマンの自己準拠的な社会システムの理論における、秩序構成の問題の検討にある。彼の社会システム理論では、タルコット・パーソンズのような社会秩序の規範的把握は斥けられる一方で、「何でもあり」もありえないとされる。社会的行為はランダムではなくあくまで一定の秩序とともに生成する。規範的ではないが任意でもないこの秩序を可能にするのは、社会システムの時間である。社会システムの秩序の様態とは「時間秩序」である。現象学的社会学のアルフレート・シュッツが主体の内的時間について考えたように、社会システムでも、過去と未来を含めたそのシステム自身の時間性の全体が、可能な選択肢をあらかじめ縮減...

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Published in現代社会学理論研究 Vol. 2; pp. 37 - 48
Main Author 多田, 光宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本社会学理論学会 2008
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ISSN1881-7467
2434-9097
DOI10.34327/sstj.2.0_37

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Summary:本稿の目的は、ニクラス・ルーマンの自己準拠的な社会システムの理論における、秩序構成の問題の検討にある。彼の社会システム理論では、タルコット・パーソンズのような社会秩序の規範的把握は斥けられる一方で、「何でもあり」もありえないとされる。社会的行為はランダムではなくあくまで一定の秩序とともに生成する。規範的ではないが任意でもないこの秩序を可能にするのは、社会システムの時間である。社会システムの秩序の様態とは「時間秩序」である。現象学的社会学のアルフレート・シュッツが主体の内的時間について考えたように、社会システムでも、過去と未来を含めたそのシステム自身の時間性の全体が、可能な選択肢をあらかじめ縮減している。社会的行為はそこからの選択として、他の諸行為との関係において単位と意味が規定され、ひるがえって他の選択の基礎となる。これが社会システムという創発秩序であり、その自己準拠である。時間こそがシステムの環境からの分化を可能にし、システム内的な諸可能性を秩序づけているのである。
ISSN:1881-7467
2434-9097
DOI:10.34327/sstj.2.0_37