スチレンのアニオン重合における溶媒効果

アニオン重合の活性種が何であるかということは,古くから重合の動力学研究の一つの中心課題であった。先年,スチレンのアニオン重合の速度論の研究において,重合の活性種にはフリーイオンとイオン対の2種類が存在することが明らかにされたが,フリーイオンの反応性が反応環境にほとんど依存しないのに対し,イオン対による生長反応は溶媒と対イオンによって大きく影響される。溶媒和力の大きい極性溶媒中でのポリスチリルアニオンのナトリウム塩のイオン対による生長反応の場合には,見かけの活性化エネルギーが負になるという異常現象を示すが,これは重合の活性種の一つであるイオン対に2種類,溶媒和イオン対と接触イオン対,が存在し,温...

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Published in高分子 Vol. 17; no. 12; pp. 1254 - 1260
Main Author 下村, 隆敏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 高分子学会 01.12.1968
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ISSN0454-1138
2185-9825
DOI10.1295/kobunshi.17.1254

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Summary:アニオン重合の活性種が何であるかということは,古くから重合の動力学研究の一つの中心課題であった。先年,スチレンのアニオン重合の速度論の研究において,重合の活性種にはフリーイオンとイオン対の2種類が存在することが明らかにされたが,フリーイオンの反応性が反応環境にほとんど依存しないのに対し,イオン対による生長反応は溶媒と対イオンによって大きく影響される。溶媒和力の大きい極性溶媒中でのポリスチリルアニオンのナトリウム塩のイオン対による生長反応の場合には,見かけの活性化エネルギーが負になるという異常現象を示すが,これは重合の活性種の一つであるイオン対に2種類,溶媒和イオン対と接触イオン対,が存在し,温度の降下とともに,反応性に富む溶媒和イオン対の存在分率が増すと考えることによって説明された。本稿では主として,ポリスチリルアニオンのイオン対の溶媒和現象に関する最近の進歩を展望した。
ISSN:0454-1138
2185-9825
DOI:10.1295/kobunshi.17.1254