高齢者の血清尿酸値と高凝固第VII因子血症

血清尿酸が冠動脈危険因子と成り得るかどうかについては議論の多いところである. 高尿酸血症はしばしば高脂血症ともなうことが知られている. 近年, 高凝固第VII因子血症は虚血性心疾患の一危険因子と考えられはじめており, 血清脂質の関連も報告がある. 我々は高齢者における血清尿酸と血清脂質, 凝固第VII因子との関係を調べるために60歳以上のアルコール非飲者138名を対象に尿酸, 第VII因子凝固活性, 第VII因子抗原量, 及びアポ蛋白を含む血清脂質を測定し, 以下の結果を得た. 血清尿酸値は, 男性では第VII因子活性, 第VII因子抗原量, VLDLコレステロール, トリグリセライド, LD...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 28; no. 5; pp. 668 - 671
Main Authors 松尾, 武文, 苅尾, 七臣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 30.09.1991
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.28.668

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Summary:血清尿酸が冠動脈危険因子と成り得るかどうかについては議論の多いところである. 高尿酸血症はしばしば高脂血症ともなうことが知られている. 近年, 高凝固第VII因子血症は虚血性心疾患の一危険因子と考えられはじめており, 血清脂質の関連も報告がある. 我々は高齢者における血清尿酸と血清脂質, 凝固第VII因子との関係を調べるために60歳以上のアルコール非飲者138名を対象に尿酸, 第VII因子凝固活性, 第VII因子抗原量, 及びアポ蛋白を含む血清脂質を測定し, 以下の結果を得た. 血清尿酸値は, 男性では第VII因子活性, 第VII因子抗原量, VLDLコレステロール, トリグリセライド, LDLコレステロール, 総コレステロール, アポ蛋白Bと正相関し, HDLコレステロールと負の相関を示した. 一方, 女性ではアポ蛋白Eのみと正相関を認めただけであった. 男性において血清尿酸値を6.04mg/dl(mean±SD) 以上と未満のグループに分けて検討したところ, 第VII因子は高尿酸血症グループに高値であった. しかし, 第VII因子活性を目的変数に, 総コレステロール, トリグリセライド, HDLコレステロール, 尿酸, コリンエステラーゼを説明変数とし, 重回帰分析を行ったところ, トリグリセライドとHDLコレステロールは第VII因子活性と有意の関連があったが, 尿酸と第VII因子活性との関連は有意ではなかった. 以上の結果は男性の高尿酸血症はVLDLコレステロール, トリグリセライド血症と関連する高第VII因子血症によって冠動脈危険因子と成り得る可能性を示唆する.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.28.668