ダウン症の聴性脳幹反応

「はじめに」 ダウン症は出生1000人に約1人の割合で発生する最も頻度の高い常染色体異常症である. 近年, ダウン症の聴性脳幹反応(ABR)について, Galbraithら1), Folsomら2)3), Squiresら4), 我が国では加我ら5), 宮尾ら6), 服部ら7), 鷲尾ら8), 米谷ら9)が報告している. それらの報告のうち, 出現波の潜時について検討してあるものでは, 対象の聴力や年齢にかかわらず, V波潜時, I-V波間隔が短いと報告されている. そして, そのI-V波間隔の短縮がダウン症のABRの一つの特徴とされてきた. 一般的に, 聴性脳幹反応の異常所見として, I-V...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 94; no. 11; pp. 1673 - 1805
Main Authors 荒尾はるみ, 丹羽英人, 柳田則之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本耳鼻咽喉科学会 20.11.1991
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ISSN0030-6622

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Summary:「はじめに」 ダウン症は出生1000人に約1人の割合で発生する最も頻度の高い常染色体異常症である. 近年, ダウン症の聴性脳幹反応(ABR)について, Galbraithら1), Folsomら2)3), Squiresら4), 我が国では加我ら5), 宮尾ら6), 服部ら7), 鷲尾ら8), 米谷ら9)が報告している. それらの報告のうち, 出現波の潜時について検討してあるものでは, 対象の聴力や年齢にかかわらず, V波潜時, I-V波間隔が短いと報告されている. そして, そのI-V波間隔の短縮がダウン症のABRの一つの特徴とされてきた. 一般的に, 聴性脳幹反応の異常所見として, I-V波間隔の「延長」という現象は数多くの疾患で報告されているが, 「短縮」と報告されているのはダウン症のみであり極めて興味深い現象である. しかしながら, その短縮の機序については解明されていない. 対象者の聴力が, I-V波間隔に大きな影響を及ぼす要因の一つであることは勿論である.
ISSN:0030-6622