局所進行膵体部癌に対する腹腔動脈合併切除を伴う尾側膵切除(DP-CAR)の成績とQOL

要旨:膵癌は根治切除が唯一長期生存を得られる可能性のある治療法であるが, 症状に乏しく進行癌で認められる症例も多い. なかでも膵体部癌は腹腔動脈や総肝動脈などの重要な血管に近接しており, その直接浸潤のみならず神経叢浸潤にて手術非適応とされることも少なくない. われわれは究極の局所制御のために, 1998年から腹腔動脈合併尾側膵切除術(DP-CAR)を施行してきた. その結果, 局所進行膵体部癌にもかかわらず1年生存率76%, 3年生存率37%と従来の手術に比べ良い成績を得ている. 一方で, 術後の癌性疼痛の完全消失が得られ, 下痢も軽微におさまるなど, 積極的な拡大手術にもかかわらずQOLの...

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Published in膵臓 Vol. 27; no. 5; pp. 668 - 673
Main Authors 那須裕也, 平野聡, 田中栄一, 土川貴裕, 加藤健太郎, 松本譲, 海老原裕磨, 七戸俊明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本膵臓学会 25.10.2012
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ISSN0913-0071

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Summary:要旨:膵癌は根治切除が唯一長期生存を得られる可能性のある治療法であるが, 症状に乏しく進行癌で認められる症例も多い. なかでも膵体部癌は腹腔動脈や総肝動脈などの重要な血管に近接しており, その直接浸潤のみならず神経叢浸潤にて手術非適応とされることも少なくない. われわれは究極の局所制御のために, 1998年から腹腔動脈合併尾側膵切除術(DP-CAR)を施行してきた. その結果, 局所進行膵体部癌にもかかわらず1年生存率76%, 3年生存率37%と従来の手術に比べ良い成績を得ている. 一方で, 術後の癌性疼痛の完全消失が得られ, 下痢も軽微におさまるなど, 積極的な拡大手術にもかかわらずQOLの著しい低下を招かないことがわかってきた. 術後は約2ヵ月で補助化学療法を開始できているが, より早期の開始を目指して特有の合併症を軽減する対策が必要と考えている. 「はじめに」 膵体部癌は症状に乏しく早期発見が困難であり, また解剖学的に腹腔動脈などの主要血管に近接しており, それらへの直接浸潤のみならず動脈周囲の神経叢に進展し, 遠隔転移がなくとも非切除となることが多い1).
ISSN:0913-0071