膵上皮内癌の超音波内視鏡像の特徴的所見と, 連続膵液細胞診 (Serial pancreatic juice aspiration cytological examination ; SPACE) の有用性について検討しえた一例

要旨: 症例は65歳男性, 軽症の急性膵炎の診断で入院となった. 造影CT, MRIで膵尾部の主膵管および分枝膵管の拡張を認めた. 超音波内視鏡にて主膵管狭窄部の近傍に分枝膵管の拡張と思われる無エコー領域とそれと連続する約1cmの腫瘤とは認識できない低エコー領域を認めた. 膵管造影で主膵管の狭窄部を認め, 連続膵液細胞診にて異型細胞を認めた. 以上の結果より, 膵管癌を疑い, 手術を施行した. 病理組織で主膵管狭窄部近傍の分枝膵管に上皮内癌の存在が明らかとなり, 膵上皮内癌の診断に至った. 低エコー領域は膵上皮内癌の間接的な画像所見であると考えられ, 同様の所見を認めた場合は, 連続膵液細胞診...

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Published in膵臓 Vol. 32; no. 5; pp. 821 - 828
Main Authors 金子淳一, 松下雅広, 田中佑一, 長澤真帆, 石橋浩平, 渡邉晋也, 金山広和, 森下宗自, 芦沢直樹, 上村和康, 橘充弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本膵臓学会 25.10.2017
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ISSN0913-0071

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Summary:要旨: 症例は65歳男性, 軽症の急性膵炎の診断で入院となった. 造影CT, MRIで膵尾部の主膵管および分枝膵管の拡張を認めた. 超音波内視鏡にて主膵管狭窄部の近傍に分枝膵管の拡張と思われる無エコー領域とそれと連続する約1cmの腫瘤とは認識できない低エコー領域を認めた. 膵管造影で主膵管の狭窄部を認め, 連続膵液細胞診にて異型細胞を認めた. 以上の結果より, 膵管癌を疑い, 手術を施行した. 病理組織で主膵管狭窄部近傍の分枝膵管に上皮内癌の存在が明らかとなり, 膵上皮内癌の診断に至った. 低エコー領域は膵上皮内癌の間接的な画像所見であると考えられ, 同様の所見を認めた場合は, 連続膵液細胞診を行うことで, 膵上皮内癌を診断することができると推察された. 「はじめに」膵臓癌が予後の悪い疾患であることは広く知られている通りであるが, その要因は, 腫瘍の自然史に対して診断時期が遅いことにあるといわれており, 膵上皮内癌の時点での早期診断, 切除が可能になれば予後の大幅な改善が期待される.
ISSN:0913-0071