バンコマイシン含有骨セメントビーズの使用経験

「はじめに」近年, 骨関節感染症に対して抗生剤含有セメントビーズによる治療が広く行われるようになってきた. 使用される抗生剤の選択は一般にセメント重合熱に対する耐熱性, 広いスペクトラム, 低い組織障害および粉末で入手が可能などの点からAminoglycoside系抗生剤が第一選択として多用されている. しかし, メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下MRSA)による骨関節感染症においてはAminoglycoside系抗生剤が有効でない場合も多い. 一方, バンコマイシンは主に耐熱性の問題2)6)から, 本邦ではバンコマイシン含有セメントビーズ(以下VCM-beads)を用いた深部感染症の治療の報...

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Published in整形外科と災害外科 Vol. 45; no. 3; pp. 774 - 777
Main Authors 金城聡, 砂川秀之, 安里潤, 金谷文則, 茨木邦夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 西日本整形・災害外科学会 1996
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ISSN0037-1033

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Summary:「はじめに」近年, 骨関節感染症に対して抗生剤含有セメントビーズによる治療が広く行われるようになってきた. 使用される抗生剤の選択は一般にセメント重合熱に対する耐熱性, 広いスペクトラム, 低い組織障害および粉末で入手が可能などの点からAminoglycoside系抗生剤が第一選択として多用されている. しかし, メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(以下MRSA)による骨関節感染症においてはAminoglycoside系抗生剤が有効でない場合も多い. 一方, バンコマイシンは主に耐熱性の問題2)6)から, 本邦ではバンコマイシン含有セメントビーズ(以下VCM-beads)を用いた深部感染症の治療の報告は少ない1). 私たちはVCM-beadsを臨床例に使用し, バンコマイシンの局所濃度および血中濃度を経時的に測定し, その有効性を検討した. さらにバンコマイシンの耐熱性に関しても文献的に考察した. 症例および方法 症例は58歳, 男性で平成4年12月に他院にて左股関節全置換術(以下THR)を施行され, 約1年後MRSA感染による排膿を生じた(図1-a). THR後1年3ヵ月で, 人工関節を抜去し持続洗浄を施行して一旦鎮静したが(図1-b), その3ヵ月後に再燃したためTHR後2年2ヵ月で股関節部を再掻爬し, 直径約1cmのVCM-beadsを100個挿入した(図2-a).
ISSN:0037-1033