遺伝性疾患としての内耳奇形の診断

内耳奇形は先天性難聴の約20%に認められる. 原因遺伝子が同定されているものがあり, 本稿では遺伝性疾患に認められる内耳奇形を中心に概説する. incomplete partition (IP) は, 蝸牛回転間の隔壁 (interscalar septum, ISS) や蝸牛軸が完全あるいは部分的に欠損するものであり, IP-I, IP-II, IP-IIIに分類される. IP-Iは, ISSと蝸牛軸のほぼ完全な欠損により嚢状の蝸牛を示し, 前庭拡大を伴うことが特徴である. IP-IIは, 基底回転とその上の回転間のみにISSがあり, 頂・中回転は嚢状となり蝸牛軸は部分的に欠損する. 約80...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 123; no. 3; pp. 210 - 216
Main Author 野口佳裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本耳鼻咽喉科学会 20.03.2020
Online AccessGet full text
ISSN0030-6622

Cover

More Information
Summary:内耳奇形は先天性難聴の約20%に認められる. 原因遺伝子が同定されているものがあり, 本稿では遺伝性疾患に認められる内耳奇形を中心に概説する. incomplete partition (IP) は, 蝸牛回転間の隔壁 (interscalar septum, ISS) や蝸牛軸が完全あるいは部分的に欠損するものであり, IP-I, IP-II, IP-IIIに分類される. IP-Iは, ISSと蝸牛軸のほぼ完全な欠損により嚢状の蝸牛を示し, 前庭拡大を伴うことが特徴である. IP-IIは, 基底回転とその上の回転間のみにISSがあり, 頂・中回転は嚢状となり蝸牛軸は部分的に欠損する. 約80%にSLC26A4バリアントを認め, 前庭水管拡大を合併する. IP-IIIはPOU3F4バリアントによるX連鎖性非症候群性遺伝性難聴に認められ, 蝸牛軸の全欠損, 骨性ISSの肥厚, 内耳道底の拡大を認め, 蝸牛と内耳道が直線上に並ぶ. CHARGE症候群は多彩な内耳奇形を示すが, 半規管無形成を特徴とする. Waardenburg症候群では, 前庭水管拡大のほか半規管奇形や蝸牛低形成を認める. 内耳奇形の正確な診断は特に人工内耳手術で重要であり, 原因遺伝子が同定されれば病態の評価に有用となる.
ISSN:0030-6622