室鳩巣「水は下より治ると申儀御尋に付申上侯」にみられる享保期の治水思想

本研究では、享保期成立の室鳩巣『献可録』「水は下より治ると申儀御尋に付申上侯」に関して、その内容と影響について考察する。本文書の内容は、禹貢他の中国史書から河川改修順序が下流から上流に向かって実施されることを示している部分と、賈譲三策を主として参照しての治水思想である。後者の治水思想は、(1) 河道の直線化、(2) 勾配を急にするための浚渫の重視が述べられており、賈譲三策を曲解している。1759 (宝暦9) 年刊の真壁用秀「地理細論集」は、享保宝永期の治水策を批判しているが、批判の対象は室鳩巣の本文書の可能性がある。したがって、いわゆる関東流・紀州流論議の基礎史料となる。明治期の西師意・尾高惇...

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Published in土木史研究 Vol. 22; pp. 41 - 47
Main Authors 金築, 亮, 神吉, 和夫
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 公益社団法人 土木学会 15.05.2002
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ISSN0916-7293
1884-8141
DOI10.2208/journalhs1990.22.41

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Summary:本研究では、享保期成立の室鳩巣『献可録』「水は下より治ると申儀御尋に付申上侯」に関して、その内容と影響について考察する。本文書の内容は、禹貢他の中国史書から河川改修順序が下流から上流に向かって実施されることを示している部分と、賈譲三策を主として参照しての治水思想である。後者の治水思想は、(1) 河道の直線化、(2) 勾配を急にするための浚渫の重視が述べられており、賈譲三策を曲解している。1759 (宝暦9) 年刊の真壁用秀「地理細論集」は、享保宝永期の治水策を批判しているが、批判の対象は室鳩巣の本文書の可能性がある。したがって、いわゆる関東流・紀州流論議の基礎史料となる。明治期の西師意・尾高惇忠による治水論の中国治水思想関係部分は、中国史書をもとに立論しており、本文書とは直接繋がらない。
ISSN:0916-7293
1884-8141
DOI:10.2208/journalhs1990.22.41