くも膜下出血後に生じた健忘症候群における事象関連電位(P_300 )について

くも膜下出血後に生じた健忘症候群の神経心理学的検討と事象関連電位(P_300 )を用いた電気生理学的検討を行った. 対象は脳外科手術後に健忘症候群を呈した5例(脳動脈瘤4, 脳動静脈奇形1)で, 年齢は42~71歳で男性2例, 女性3例であった. いずれも失見当と近時記憶の障害を認めたが, 遠隔記憶や即時記銘は保たれていた. P_300 潜時の遅れは1例でのみ認めたが, 神経心理症状の重症度や病巣とP_300 潜時との間に関係はみられなかった. 健忘症候群においては, P_300 潜時と記憶の間に関係がないと思われた. はじめに 健忘を中核とする病態は健忘症候群と呼ばれ, 近時記憶の選択的な障...

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Published inリハビリテーション医学 Vol. 30; no. 7; pp. 474 - 480
Main Authors 前島伸一郎, 舩橋利理, 桑田俊和, 上松右二, 尾崎文教, 寺田友昭, 中井國雄, 板倉徹, 駒井則彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本リハビリテーション医学会 1993
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ISSN0034-351X

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Summary:くも膜下出血後に生じた健忘症候群の神経心理学的検討と事象関連電位(P_300 )を用いた電気生理学的検討を行った. 対象は脳外科手術後に健忘症候群を呈した5例(脳動脈瘤4, 脳動静脈奇形1)で, 年齢は42~71歳で男性2例, 女性3例であった. いずれも失見当と近時記憶の障害を認めたが, 遠隔記憶や即時記銘は保たれていた. P_300 潜時の遅れは1例でのみ認めたが, 神経心理症状の重症度や病巣とP_300 潜時との間に関係はみられなかった. 健忘症候群においては, P_300 潜時と記憶の間に関係がないと思われた. はじめに 健忘を中核とする病態は健忘症候群と呼ばれ, 近時記憶の選択的な障害とされている. 健忘症候群では一般に遠隔記憶や瞬時記憶は障害されず, 記銘力障害が主体となり, 発病後に生じたことを覚えることができない前向き健忘や見当識障害, 発病以前に得た情報を再生できなくなる後向き健忘などを呈する.
ISSN:0034-351X