CEA時の一時的血流遮断による神経症状が遷延した内頚動脈狭窄症の1例

頚動脈内膜剥離術(carotid endarterectomy:CEA)では一時的血流遮断が不可避であり, 虚血不耐性による神経症状を呈する症例があるが, その多くは速やかに改善する. また, 術後の神経症状の原因として虚血以外に過灌流の病態が広く知られている. われわれは, CEA後に脳梗塞や過灌流を示す所見がみられないにもかかわらず神経症状が遷延した1例を経験した. 左内頚動脈狭窄症を有する73歳女性が一過性の失語をきたした. 術前のmagnetic resonance angiography(MRA)では, 右前大脳動脈A1部と左後交通動脈を形態的に欠いていた. また, 血管造影ではMa...

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Published in脳卒中の外科 Vol. 51; no. 1; pp. 34 - 39
Main Authors 鈴山堅志, 中城博子, 岡本浩昌
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脳卒中の外科学会 31.01.2023
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ISSN0914-5508

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Summary:頚動脈内膜剥離術(carotid endarterectomy:CEA)では一時的血流遮断が不可避であり, 虚血不耐性による神経症状を呈する症例があるが, その多くは速やかに改善する. また, 術後の神経症状の原因として虚血以外に過灌流の病態が広く知られている. われわれは, CEA後に脳梗塞や過灌流を示す所見がみられないにもかかわらず神経症状が遷延した1例を経験した. 左内頚動脈狭窄症を有する73歳女性が一過性の失語をきたした. 術前のmagnetic resonance angiography(MRA)では, 右前大脳動脈A1部と左後交通動脈を形態的に欠いていた. また, 血管造影ではMatasテストとAlcockテストにおいてもこれらの動脈は描出されなかった. 症候性内頚動脈狭窄症に対し全身麻酔下にCEAを施行した. 術中の遮断時間はシャント挿入時に7分30秒, シャント抜去時に9分であり, 手術はeventlessで終了した. 術後, 失語と右片麻痺が出現したため頭部computed tomography(CT)およびmagnetic resonance imaging(MRI)を施行したところ, 頭蓋内出血や脳梗塞の所見は認めなかったが, arterial spin labeling(ASL)で両側視床と左側頭-後頭葉に血流増加を示唆する所見がみられた. 失語は改善するも右片麻痺は持続したが, 術後3日のMRIでは脳梗塞の所見はみられず, ASLでの両側視床と左側頭-後頭葉の血流増加は改善していた. 経過中に意識障害や痙攣はみられず術後90時間経過の後に症状は完全に消失した. CEAにおける虚血不耐性の予測と虚血性合併症の予防には, 術前のWillis動脈輪による側副血行路の十分な検討が必要である. また, 神経症状の原因としてnon-convulsive status epilepticus(NCSE)の可能性についても検討を要し, ASLによる評価が診断の一助となるものと考えられた.
ISSN:0914-5508