アルコール性肝硬変患者にみられた一過性の門脈逆流の1例

36歳の大酒家の女性が, 黄疸と腹水の治療目的に入院となった.腹部は著明に膨隆し下腿浮腫も認められた.入院時検査成績ではGOT 265 IU/I, GPT 50 IU/I, ALP 971 IU/I, γ-GTP 220 IU/I, LDH 718 IU/I, TB22.4mg/dl, PT活性59%, Fibrinogen 359 mg/dl, FDP539μg/mlであった.腹部超音波検査では, 肝は明らかに変形・萎縮しており, 多量の腹水の貯留が認められ, カラードプラ法では門脈本幹から脾静脈にかけて門脈血流の逆流が認められた.単純CTでは肝は萎縮が著明で, 高度の脂肪肝の状態であった....

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Published in日本門脈圧亢進症学会雑誌 Vol. 10; no. 3-4; pp. 147 - 151
Main Authors 宮崎, 敦史, 菊地, 亮介, 矢島, 義昭, 菅原, 和彦, 及川, 圭介, 柿坂, 啓介, 高橋, 信孝, 枝, 幸基
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本門脈圧亢進症学会 2004
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ISSN1344-8447
2186-6376
DOI10.11423/jsph1999.10.3-4_147

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Summary:36歳の大酒家の女性が, 黄疸と腹水の治療目的に入院となった.腹部は著明に膨隆し下腿浮腫も認められた.入院時検査成績ではGOT 265 IU/I, GPT 50 IU/I, ALP 971 IU/I, γ-GTP 220 IU/I, LDH 718 IU/I, TB22.4mg/dl, PT活性59%, Fibrinogen 359 mg/dl, FDP539μg/mlであった.腹部超音波検査では, 肝は明らかに変形・萎縮しており, 多量の腹水の貯留が認められ, カラードプラ法では門脈本幹から脾静脈にかけて門脈血流の逆流が認められた.単純CTでは肝は萎縮が著明で, 高度の脂肪肝の状態であった.アルコール性肝硬変からの肝不全状態と考え, 血清FDPが上昇していたことから, Gabexate mesilateの持続投与とAT III製剤の補充を開始した.その後は黄疸・腹水ともに改善にむかい, 2カ月後に漸く門脈血流は順行性となった.今後, 症例が集積されることにより, 門脈逆流の臨床的意義が明らかになることが期待される.
ISSN:1344-8447
2186-6376
DOI:10.11423/jsph1999.10.3-4_147