猫の全身性アミロイド沈着症の1例

いわゆる"定型的アミロイド沈着症′゛が6才の雌猫に見いだされた.臨床的には,食欲不振,嘔吐などが認められ,腎炎の診断のもとに,3~4週後に死亡した.肉眼的には,栄養不良で,可視粘膜は蒼白,皮下脂肪組織は黄色調を帯びている.肝は赤褐色で,高度に混濁しているが,小葉像は明瞭である.腎においては,表口の粗糖化とともに.実質の混濁が著明で,間質性腎炎(萎縮腎)と診断される.その他,右心室の拡張,カタール性胃腸炎が認められた組織学的には,肝の毛細血管周囲リンパ腔,腎の糸球体および間質に高度のアミロイド物質の沈着があり,間質性腎炎像(萎縮腎)も認められる.その他,牌の小血管壁,心筋間質結合組織お...

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Published in日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) Vol. 28; no. 5; pp. 259 - 265_2
Main Authors 五藤, 精知, 中松, 正雄, 森田, 迪夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本獣医学会 25.10.1966
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ISSN0021-5295
1881-1442
DOI10.1292/jvms1939.28.259

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Summary:いわゆる"定型的アミロイド沈着症′゛が6才の雌猫に見いだされた.臨床的には,食欲不振,嘔吐などが認められ,腎炎の診断のもとに,3~4週後に死亡した.肉眼的には,栄養不良で,可視粘膜は蒼白,皮下脂肪組織は黄色調を帯びている.肝は赤褐色で,高度に混濁しているが,小葉像は明瞭である.腎においては,表口の粗糖化とともに.実質の混濁が著明で,間質性腎炎(萎縮腎)と診断される.その他,右心室の拡張,カタール性胃腸炎が認められた組織学的には,肝の毛細血管周囲リンパ腔,腎の糸球体および間質に高度のアミロイド物質の沈着があり,間質性腎炎像(萎縮腎)も認められる.その他,牌の小血管壁,心筋間質結合組織および小血管壁,舌,胃,小腸および大腸の粘膜固有層および副腎皮質の毛細血管周囲リンパ腔,膵および甲状腺の間質結合組織にも,アミロイド物質の沈着がある.膀胱粘膜固有層にも,わずかながら同物質の沈着がある.また脳の脈絡叢の小血管壁の水腫性膨化が認められた.かかる物質の染色性は,程度の差はあるが,ヘマトキシリン・エオジン染色で淡赤色,VanGicsonで黄色ないし淡紅褐色,Congorcdで淡紅色,Mcthylviolctで紅紫色,PAS反応陽性ないし弱陽性,ヨード反応にわずかに陽性で淡褐色,SudanIII染色では陰性である.その他,胃腸炎と黄色脂肪症が同時に注目された.萎縮腎の原因として,アミロイド腎炎のほかに,Lcptospira感染も疑ったが,Lcvaditi染色では陰性であった.本例においては,これらの合併症がアミロイド症発生の有力な原因とは考えられない.しかし本例を,簡単に原発性アミロイド症ときめるのは111一計であろう。
ISSN:0021-5295
1881-1442
DOI:10.1292/jvms1939.28.259