周期性の発熱,胸背部痛をきたした家族性地中海熱の女性例 AYA世代患者における多職種連携の重要性
家族性地中海熱は,反復する周期的な発熱,漿膜炎を主徴とする自己炎症性疾患で,主に常染色体潜性(劣性)遺伝形式をとる。コルヒチン内服により生命予後は良好だが,恒久的な服用が必要であり,遺伝性疾患に対する偏見やコルヒチン内服による不妊など医学的・社会的課題も多い。【症例】10代女性。X年から,2-3日持続する38度台の発熱と片側性の胸背部痛が1ヵ月に1回出現するようになった。近医小児科を受診するも症状は自然消退するため経過観察されていた。X+4年5月に発熱と右側胸部痛をきたし,WBC 9,500/μl,CRP 5.9 mg/dlと異常を認め当科に紹介。受診時,症状は消失しており,血液検査,全身CT...
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Published in | 四国医学雑誌 Vol. 80; no. 1.2; pp. 69 - 74 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
徳島医学会
21.06.2024
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Subjects | |
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ISSN | 0037-3699 2758-3279 |
DOI | 10.57444/shikokuactamedica.80.1.2_69 |
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Summary: | 家族性地中海熱は,反復する周期的な発熱,漿膜炎を主徴とする自己炎症性疾患で,主に常染色体潜性(劣性)遺伝形式をとる。コルヒチン内服により生命予後は良好だが,恒久的な服用が必要であり,遺伝性疾患に対する偏見やコルヒチン内服による不妊など医学的・社会的課題も多い。【症例】10代女性。X年から,2-3日持続する38度台の発熱と片側性の胸背部痛が1ヵ月に1回出現するようになった。近医小児科を受診するも症状は自然消退するため経過観察されていた。X+4年5月に発熱と右側胸部痛をきたし,WBC 9,500/μl,CRP 5.9 mg/dlと異常を認め当科に紹介。受診時,症状は消失しており,血液検査,全身CT検査,心臓超音波検査などに異常はなかった。臨床経過から自己炎症性疾患が疑われ,患者本人と保護者同意の上,遺伝子検査を施行し,MEFV遺伝子の変異(M694I)を認め,家族性地中海熱と診断した。同年11月からコルヒチン内服を開始し,発熱や胸背部痛は消失したが,X+7年に就職後,生活習慣の乱れからコルヒチン内服が不規則となり,胸背部痛が再燃した。またコルヒチン内服による不妊や催奇形性を危惧しセカンドオピニオン受診や遺伝カウンセリングを行い,内服コンプライアンスは改善した。【考察】AYA世代の本例において,進学,就職,結婚,妊娠などに対する心理的ストレスや将来への不安が強く,また患者家族のケアも重要である。今後は本症の疾患認知度の向上と内科,小児科,産婦人科,臨床遺伝部門,臨床心理士など多職種連携による診療支援体制の構築が求められる |
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ISSN: | 0037-3699 2758-3279 |
DOI: | 10.57444/shikokuactamedica.80.1.2_69 |