内閣支持のムードと経済的変動要因 内閣支持理由データを用いた長期的分析

本稿では時事通信社の世論調査データの分析から、マクロレベルでの内閣支持の形成と変動の要因を検討する。内閣支持のサブクエスチョンである内閣支持理由にStimsonの再帰的二項モデルを適用し、「政権能力支持」、「漠然支持」 という内閣支持に関する2つのムードを析出した。数値の推移をみると、55年体制期は漠然支持、93年以降は政権能力支持ムードの値が高く、政権交代・制度改革を経て政権支持がより政権能力の評価に基づくものになっている。また、両ムードの組み合わせにより内閣支持率の93%が説明される。ベクトル自己回帰モデル (VAR) によって経済変数とそれぞれの支持ムードの関係を分析すると、日経平均株価...

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Published in年報政治学 Vol. 72; no. 2; pp. 2_209 - 2_233
Main Author 小野, 弾
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本政治学会 2021
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ISSN0549-4192
1884-3921
DOI10.7218/nenpouseijigaku.72.2_209

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Summary:本稿では時事通信社の世論調査データの分析から、マクロレベルでの内閣支持の形成と変動の要因を検討する。内閣支持のサブクエスチョンである内閣支持理由にStimsonの再帰的二項モデルを適用し、「政権能力支持」、「漠然支持」 という内閣支持に関する2つのムードを析出した。数値の推移をみると、55年体制期は漠然支持、93年以降は政権能力支持ムードの値が高く、政権交代・制度改革を経て政権支持がより政権能力の評価に基づくものになっている。また、両ムードの組み合わせにより内閣支持率の93%が説明される。ベクトル自己回帰モデル (VAR) によって経済変数とそれぞれの支持ムードの関係を分析すると、日経平均株価は政権能力支持ムード、GDP成長率は漠然支持ムードに影響することがわかった。有権者は経済状況を判断材料として内閣支持を決定してきたが、55年体制期に比率が高かった漠然とした支持が経済成長に基づいたものであったのに対して、55年体制崩壊後に主となった政権の能力評価に基づく支持は日経平均株価からの影響を受けている。
ISSN:0549-4192
1884-3921
DOI:10.7218/nenpouseijigaku.72.2_209