ペパーミントをコンパニオンプランツとして利用した次世代有機トマト栽培システムの開発

植食者に食害された植物が放出する匂いは,近隣の未被害植物の防御能力を向上させることが知られている。しかし,食害された植物の農業利用は現実的でないことなどが理由に未だ実装に至っていない。この問題に対して,恒常的に匂いを放出するペパーミントやキャンディミントの近傍でコマツナおよびダイズを生育したところ,それぞれの葉で防御遺伝子(pathogenesis-related protein 1遺伝子(PR1))等の発現が誘導され,病害虫抵抗性が向上することが近年報告された。しかし,ナス科の重要作物であるトマトにおける効果は未検証であった。本研究では,栽培室内でペパーミントの近傍(10 cm)に配置してト...

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Published inアロマテラピー学雑誌 Vol. 26; no. 2; pp. 68 - 71
Main Authors 礒田 涼花, 有村 源一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本アロマ環境協会 05.09.2025
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ISSN1346-3748
2189-5147
DOI10.15035/aeaj.260203

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Summary:植食者に食害された植物が放出する匂いは,近隣の未被害植物の防御能力を向上させることが知られている。しかし,食害された植物の農業利用は現実的でないことなどが理由に未だ実装に至っていない。この問題に対して,恒常的に匂いを放出するペパーミントやキャンディミントの近傍でコマツナおよびダイズを生育したところ,それぞれの葉で防御遺伝子(pathogenesis-related protein 1遺伝子(PR1))等の発現が誘導され,病害虫抵抗性が向上することが近年報告された。しかし,ナス科の重要作物であるトマトにおける効果は未検証であった。本研究では,栽培室内でペパーミントの近傍(10 cm)に配置してトマト個体を7日間栽培したところ,トマトの葉におけるPR1の発現が高められることが見いだされた。さらに圃場試験において,ペパーミントからさまざまな距離でトマト個体を設置し,3週間生育させた。その結果,20, 50, 100 cmの距離のトマトは,ミントから200 cm離れた場所で栽培したコントロールのトマト個体と比べて,それぞれ20.9%, 37.4%, 74.3%の被害率となった。これらの結果から,ペパーミントはトマト栽培における害虫防除に有効であるコンパニオンプランツであることが示唆された。
ISSN:1346-3748
2189-5147
DOI:10.15035/aeaj.260203