当院回復期リハビリテーション病棟退院患者に対するアンケート調査 第一報 ADLと介護者の介護負担感との関係

【はじめに】  当院回復期リハビリテーション(以下リハ)病棟では、患者の在宅復帰に向けて日々リハに取り組んでいるが、在宅復帰後の患者および介護者の生活状況の把握が十分に出来ていないのが現状である。そこで今回退院後の患者に対して生活に関するアンケート調査を実施し、本発表ではその中でリハ病棟退院時の日常生活動作(ADL)と退院後の在宅での主介護者の介護負担感に着目して検討した結果を報告する。 【対象と方法】  対象は平成21年1月1日~同年12月31日の期間で当院回復期リハ病棟から自宅退院した患者59名のうちアンケート回収が可能であった49名(平均73.1歳、男性27名、女性22名、平均在院日数1...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 110
Main Authors 鈴木, 幹次郎, 新谷, 彰吾, 徳永, 嘉彦, 阿部, 俊明, 矢越, 孝裕
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2011
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2011.0.110.0

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Summary:【はじめに】  当院回復期リハビリテーション(以下リハ)病棟では、患者の在宅復帰に向けて日々リハに取り組んでいるが、在宅復帰後の患者および介護者の生活状況の把握が十分に出来ていないのが現状である。そこで今回退院後の患者に対して生活に関するアンケート調査を実施し、本発表ではその中でリハ病棟退院時の日常生活動作(ADL)と退院後の在宅での主介護者の介護負担感に着目して検討した結果を報告する。 【対象と方法】  対象は平成21年1月1日~同年12月31日の期間で当院回復期リハ病棟から自宅退院した患者59名のうちアンケート回収が可能であった49名(平均73.1歳、男性27名、女性22名、平均在院日数102日、脳血管疾患34名、整形疾患11名、脊髄損傷4名)とした。患者本人に対しては住宅改修の満足度、改修箇所・福祉用具の使用状況のアンケートを、また主介護者に対しては介護負担感(Zarit介護負担尺度日本語版(以下、J-ZBI)を使用)に関するアンケート調査を実施した。今回は、退院時の病院内でのFIM(総点および各項目の得点)と、J-ZBI総点との関係を調査した(スピアマンの相関係数使用)。本人、ご家族へ本研究に対する十分な説明を行い協力の承諾を得た。 【結果】  退院時FIMの平均点は総点101.9点、運動項目72点、認知項目29.9点、J-ZBI総点の平均点は19.2点であった。J-ZBIと退院時FIM総点および運動項目・認知項目との関係において、それぞれで負の相関関係が認められた(P<0.05)。また、FIM各項目ごとに同様の調査を実施した結果、排泄・移動項目以外ではJ-ZBIとの相関が認められたが、排泄・移動項目とでは認められなかった。 【考察とまとめ】  退院時FIMとJ-ZBIの相関関係を調査した結果、FIMとJ-ZBIにおいて負の相関関係を認め、患者のADL能力が低いほど、主介護者の介護負担が大きいことが示唆された。牧迫ら(2008)は、われわれの結果と同様に、要介護者の日常生活動作能力や基本動作能力は介護負担感に影響を与える一因であることが示唆されと報告しているが、三浦ら(2010)は要介護者のFIMと介護負担の間には相関関係は認められず、身体機能のみでは介護負担感の増大に結びつかなかったと報告している。また、普段の印象から排泄の介護量が多いと介護負担感が大きくなると予測したが、今回われわれの調査ではFIM排泄項目とJ-ZBIとの相関が認められなかった。これは今回の対象者ではFIM排泄平均が排尿5.7点、排便5.8点と比較的高得点であったためと考えられ、実際有意差は得られなかったものの、負の相関の傾向は認められた。これらの結果から、介護者の介護負担感をなるべく減らすためには、入院中から退院後の生活を見据え、他職種との連携をとりながら適切な介入方法を検討する事が重要だと改めて認識した。今回、他にも住宅改修や福祉用具の利用に対するアンケートも併せて行っており、多角的視点から在宅生活における患者・家族のQOL向上を目指したリハに役立てていきたい。
Bibliography:110
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2011.0.110.0