右肩腱板損傷術後理学療法に苦渋した1症例 患側へのリーチ動作に着目して

【はじめに】 今回、右肩関節腱板損傷により観血的整復術を施行した症例を経験した。本症例は腱板断端部の変性が強く、術中十分な腱板の整復が困難であった。本症例に対し術後理学療法を施行するにあたり、動的な体幹・右肩関節機能を観察するため右前方へのリーチ動作に着目し、上半身重心の移動をともなった動作方略の獲得を目的に理学療法を実施したところ、運動機能に若干の改善が得られたので以下に報告する。 【症例紹介】 年齢:62歳、性別:男性、職業:左官業、診断名:右棘上筋・棘下筋完全断裂、右肩峰下インピンジメント症候群、現病歴:平成17年9月8日、自宅にて草刈作業時に右肩痛出現、11月4日観血的整復術施行、12...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 130
Main Authors 島澤, 真一, 木藤, 伸宏, 羽田, 清貴, 辛嶋, 良介, 菅川, 祥枝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2006
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2006.0.130.0

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Summary:【はじめに】 今回、右肩関節腱板損傷により観血的整復術を施行した症例を経験した。本症例は腱板断端部の変性が強く、術中十分な腱板の整復が困難であった。本症例に対し術後理学療法を施行するにあたり、動的な体幹・右肩関節機能を観察するため右前方へのリーチ動作に着目し、上半身重心の移動をともなった動作方略の獲得を目的に理学療法を実施したところ、運動機能に若干の改善が得られたので以下に報告する。 【症例紹介】 年齢:62歳、性別:男性、職業:左官業、診断名:右棘上筋・棘下筋完全断裂、右肩峰下インピンジメント症候群、現病歴:平成17年9月8日、自宅にて草刈作業時に右肩痛出現、11月4日観血的整復術施行、12月9日より当クリニックでの運動療法開始となる。手術所見:棘上筋の断端は変性が強く引き出しは困難で、大結節骨溝の一部を覆う程度の被覆となった。棘下筋は変性と退縮が強く被覆が困難であった。 【理学療法評価】 坐位姿勢:骨盤後傾、胸椎後弯増強し、上部体幹左側屈・左回旋、上半身重心は右後方に変位し、頭部右側屈・右回旋していた。胸郭・胸椎の可動性は低く、両肩甲骨外転、特に右肩甲骨は上方回旋し、右上腕骨頭は前方変位、右上腕外旋、前腕回内位で、右肘関節軽度屈曲位となっていた。右前方リーチ動作:骨盤は後傾したままで、上半身重心は左側変位し、頭部右側屈・右回旋、体幹は左側屈していた。右肩甲骨上方回旋、右上腕骨頭上前方に変位しており、右肩関節上部に疼痛の訴えがあった。 【結果及び考察】 本症例は、術中に損傷腱板の整復が困難であったため、肩甲上腕関節の安定性は低下していると推察される。坐位姿勢では下部体幹機能低下により坐位アライメントに変位が生じ、胸椎・胸郭の可動性も低下している状態であった。このため右前方へのリーチ動作時、骨盤の前傾が困難となり、上半身重心が左後方に変位、体幹の左側屈をとる動作方略となり、右肩関節では上腕骨頭の上前方への変位が生じ、過剰なストレスが加わっていると推察した。そこで、右肩関節機能改善とともに体幹機能に着目し、上半身重心の移動をともなった動作方略の獲得を目的に理学療法を実施した。結果、坐位姿勢の正中化が得られ、右前方へのリーチ動作時上半身重心の右側への移動が見られるようになり、動作方略の改善とともに疼痛が消失した。 【まとめ】 今回、右肩腱板損傷を呈した症例で、観血的腱板整復が困難であった症例を経験した。本症例に対し、体幹機能改善に着目し右前方へのリーチ動作方略改善を目的に理学療法を実施した。その結果、動作方略に若干の改善が得られ、疼痛が消失した。しかし、上腕骨頭の変位が残存しており、肩関節自体の機能改善については、今後も考慮の必要があると考えられた。
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2006.0.130.0