内的ボディイメージ時の脳活動 NIRSによる検討

【はじめに】  運動学習は,ボディイメージをどのように持ち,自己の身体を中心とした空間をどのように知覚しているかによって変化するといわれ,近年,ボディイメージや運動イメージの精度が,実際のパフォーマンスに影響することが報告されている.ボディイメージの形成には,能動的な動きの中での空間視と体性感覚の統合が要求され,脳内ではその統合は頭頂連合野が関与している.そこで本研究では,健常者の内的なボディイメージを検討するために,接近する対象物に自己の指先が届くと判断した際の頭頂連合野,運動関連領域の活動を近赤外分光法(以下;NIRS)を用いて検討した.さらに視覚によるフィードバックを与え,介入がボディイ...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 155
Main Authors 崎田, 正博, 弓削, 類, 松岡, 美紀, 河原, 裕美, 中川, 慧, 松木, 直人, 青景, 遵之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2009
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2009.0.155.0

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Summary:【はじめに】  運動学習は,ボディイメージをどのように持ち,自己の身体を中心とした空間をどのように知覚しているかによって変化するといわれ,近年,ボディイメージや運動イメージの精度が,実際のパフォーマンスに影響することが報告されている.ボディイメージの形成には,能動的な動きの中での空間視と体性感覚の統合が要求され,脳内ではその統合は頭頂連合野が関与している.そこで本研究では,健常者の内的なボディイメージを検討するために,接近する対象物に自己の指先が届くと判断した際の頭頂連合野,運動関連領域の活動を近赤外分光法(以下;NIRS)を用いて検討した.さらに視覚によるフィードバックを与え,介入がボディイメージの形成や再構築に与える影響を検討した. 【方法】  対象は,中枢神経疾患の既往が無い,健常成人11名(男性7名,女性4名,年齢:25.7±7.2歳)とした. 近赤外分光法装置(OMM-2001,島津製作所,日本)の全24チャンネルを,Cz(頭頂中心部)を中央に左右の運動前野,補足運動野,上頭頂小葉,下頭頂小葉,後部頭頂葉の領域に分けて脳酸素動態を計測した.  課題は,座位にて対象者に接近する蛍光ボールを注視するだけのcontrol課題と,接近する蛍光ボールを注視し,自己の指先が届くと判断した時に合図させるreach image課題とした.さらにreach image課題は,フィードバックを入れないtask1と,フィードバック(予測した位置と実際のリーチとのエラー誤差を確認させる)を与えるtask2を設定した.解析は,イメージ時の脳活動とした.測定は,安静15秒,タスク20秒,安静15秒のブロックデザインとし,各5回連続して行った.なおreach image課題では,エラー誤差を0.5cm単位で記録した. 【結果】  脳活動では,control 課題とtask1のoxy-Hb 量の比較では,有意差は認められなかった.しかし,task1と比較して task2では全領域のoxy-Hbが増加した.特に左右運動前野,右下頭頂小葉では,有意にoxy-Hbの増加がみられた(p<0.05).また,エラー誤差の比較では,task1に比べtask2では,有意にエラー誤差が減少した(p<0.05). 【考察】  本研究でのフィードバックの実運動時には視覚誘導性の到達運動が行われており,その脳内機構は,運動前野や下頭頂小葉が重要な役割を果たしているといわれている. 実運動時と運動イメージ時で同運動関連領野が賦活されるという報告は多くあり,これはヒトがある運動効果器の運動をイメージすると,その運動の制御に関連する運動領野の脳活動が賦活されることを意味する.本研究においても,内的なイメージの際に視覚誘導性の到達運動と同領域の賦活がみられた.これは,フィードバックの記憶によって,視覚的な注意が喚起され,フィードバックを行わないtask1では鮮明に想起できなかった視覚的なイメージをtask2では運動イメージとしてより鮮明に想起することができたと考えられる.よって,フィードバックを与えることで,脳内の運動イメージやボディイメージを変化させうることが示された.
Bibliography:155
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2009.0.155.0