立脚初期に体幹の不安定性が生じていたTKA術後の一症例 立脚後期に着目して

【はじめに】  歩行立脚初期の動作方略に問題を呈する場合,立脚初期に必要となる局所機能の改善や下肢の機能的連結を目的とした荷重練習を行うことで改善を得られることが多い.しかし,今回,術後早期から局所機能の改善を図り,荷重評価での動作方略に問題がないにも関わらず,左立脚期初期に体幹の左側方への不安定性が認められた症例を経験した.理学療法評価の結果から,立脚後期に着目してアプローチを行い,改善を得られたため,以下に報告する. 【症例紹介】  70歳代女性.診断名は左変形性膝関節症.2009年頃より誘因なく左膝に疼痛が出現,2011年2月22日に左全人工膝関節置換術を施行した.術後翌日よりROM・筋...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 74
Main Authors 辛嶋, 良介, 奥村, 晃司, 吉田, 研吾, 杉木, 知武, 合津, 卓朗, 川嶌, 眞人, 本山, 達男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2011
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2011.0.74.0

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Summary:【はじめに】  歩行立脚初期の動作方略に問題を呈する場合,立脚初期に必要となる局所機能の改善や下肢の機能的連結を目的とした荷重練習を行うことで改善を得られることが多い.しかし,今回,術後早期から局所機能の改善を図り,荷重評価での動作方略に問題がないにも関わらず,左立脚期初期に体幹の左側方への不安定性が認められた症例を経験した.理学療法評価の結果から,立脚後期に着目してアプローチを行い,改善を得られたため,以下に報告する. 【症例紹介】  70歳代女性.診断名は左変形性膝関節症.2009年頃より誘因なく左膝に疼痛が出現,2011年2月22日に左全人工膝関節置換術を施行した.術後翌日よりROM・筋機能練習を開始,早期荷重を段階的に実施し,10日目より杖歩行練習を行った.歩行時に体幹の不安定性が認められ、転倒への不安からADL拡大を図れなかった. 【理学療法評価~訓練前~】  術後14日目において,主な疼痛は左立脚後期に術創部周囲に出現していた.ROM(Lt)は膝関節屈曲110°,伸展0°,股・足関節での制限はなかった.MMT(Rt/Lt)は体幹屈曲4,回旋4/4,腸腰筋3+/3-,大殿筋4/4,中殿筋4/4,内転筋4/4,大腿四頭筋4/4,ヒラメ筋5/4,足趾屈筋4/3であった.静止立位での体幹の著名な変位はなく,立脚初期を想定した荷重評価では体幹左側屈の増大なく,骨盤の側方移動が可能であった.歩行では左立脚期にて,体幹左側屈位で初期接地(以下,IC)し,荷重応答期(以下,LR)へ移行するにつれ,体幹左側屈が増大し,この時期に左側方へバランスを崩すことがみられた.立脚終期(以下,Tst)では,フォアフットロッカー機能の低下が認められ,体幹左側屈位を呈した状態で遊脚期・立脚初期へと移行していた. 【臨床推論】  左立脚初期における体幹の左側方への不安定性は,静止立位での変位がなく,IC時に体幹左側屈位を呈すること,側方制御に関わる股関節機能,荷重評価での動作方略に問題がないことから,立脚初期以前でのPheseに問題があると考えた.本症例ではフォアフットロッカー機構に関与する腸腰筋やヒラメ筋,足趾屈筋群の機能低下が認められ,Tstにて前方への推進力が得られず,右下肢への荷重伝達が行えないことで体幹左側屈位を呈し,遊脚期での体幹正中化を困難にしていると考えた.その結果,体幹左側屈位にてICすることで体幹に左側屈方向のモーメントが生じ,左側方への不安定性を呈していると推察した. 【理学療法アプローチ】  臨床指標に立脚初期での体幹正中化を挙げ,腸腰筋やヒラメ筋,足趾屈筋の機能改善と立脚後期を想定した荷重練習を実施した. 【結果~訓練後~】  左Tstでのフォアフットロッカー機能の改善が得られ,遊脚期および立脚初期での体幹左側屈が軽減し,不安定性の改善を図れた.症例の転倒に対する不安感も軽減し,2日後に杖歩行への移行が可能となった.
Bibliography:074
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2011.0.74.0