学生の学力の推移から考える臨床実習指導者のあり方 当院作成による評価問題を用いてー考察

【はじめに】  近年、作業療法士の養成校は著しく急増してきている.このような状況の中で学生の学力低下が生じているといわれている.医療教育において,学習内容を十分に消化し学んだ知識を創造的に活用する能力を身につけるのが臨床実習であると考える.その為,臨床実習においては基礎知識が重要となる.当院では実習に際して学生の自己確認及び学力を知る意味で基礎となる認知領域の試験を実施している.実施して8年ほど経つが最近学生の基礎学力にも以前と比べ差が生じてきていると感じる.そこで,今回当院で引き受けてきた学生を総括し,今後の指導の指標として若干の知見を得たので報告する. 【対象】  平成 13年~20年度に...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 52
Main Authors 大石, 豪, 柳原, 郁子, 吉岡, 泰雅, 園田, 正司, 古賀, 久伸, 赤島, 治, 横田, あか里
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2009
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2009.0.52.0

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Summary:【はじめに】  近年、作業療法士の養成校は著しく急増してきている.このような状況の中で学生の学力低下が生じているといわれている.医療教育において,学習内容を十分に消化し学んだ知識を創造的に活用する能力を身につけるのが臨床実習であると考える.その為,臨床実習においては基礎知識が重要となる.当院では実習に際して学生の自己確認及び学力を知る意味で基礎となる認知領域の試験を実施している.実施して8年ほど経つが最近学生の基礎学力にも以前と比べ差が生じてきていると感じる.そこで,今回当院で引き受けてきた学生を総括し,今後の指導の指標として若干の知見を得たので報告する. 【対象】  平成 13年~20年度に当院で実習をおこなった学生,内短期実習にきた学生15名,長期実習に来た学生19名の計34名. 【方法】  1)実習に際し学生に実施している基礎的知識問題(医学的基礎知識に関する項目4項目と専門的知識に関する項目4項目)における各年度の平均点の傾向と各年度における総点数の差をみる(χ²検定)2)評価実習生と臨床実習生における点数に差があるのか(t検定)3)医学的基礎知識と専門的知識において差があるのか(t検定)の3点から検討してみる.  なお,学生にはこの問題施行について事前に告知し説明している. 【結果】  1)各年度の合計点数の平均点は徐々に下降しており,年度間における基礎知識の8項目においても有意に低下していた(p<0.01).2)評価実習生と臨床実習生には基礎知識における有意な差はなかった(0.05<p).3)認知領域における医学的基礎知識が専門的知識より点数は高く,2群間においても有意に差があった(p<0.05). 【考察】  上記の結果より年々増え続ける学生において養成校による差異はあっても学内で学習してきた内容を整理・理解するに至らず,実習に臨んでいると言える.また,評価実習での経験が臨床実習を向えるにあたりフィードバックされておらず,専門職・技術職としての認識の低さが伺える.学生に実習を「授業の一環」と捉えさせるのではなく,これまでの目標である治療者としての一歩であると自覚させて行くことが大事である.その為,実習で学ぶことは職業的な知識であり,思考法であり,取り組む姿勢であると思う.しかし,臨床現場においては学生と共に試行錯誤している実習指導者も多く,学生を中心に据え実習をやり易くする事を探求しているところもある.「何をみて、何を考えて、何を感じさせるのか」を指導者みずから探求することが,学生を理解し望ましい学力の向上につながると考える. 【結語】  1)「学力」を認知領域のみで見るならば,各年代の成績と専門的知識においてそれぞれ相関がみられた.これは,専門的学生としての学力が低下してきていることが伺える.  2) 学生の専門的知識が定着していない.その為,臨床実習指導者と学校教員が協力し,より実践で生かされる認知領域の教育が行えるよう検討していく必要があると考える.
Bibliography:052
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2009.0.52.0