ヒトアンギオテンシンIIの体内動態に関する研究(III):ヒトアンギオテンシンIIのラットにおける分布,代謝および排泄

ラットに3H-AIIを静脈内投与したときの分布,代謝および排泄について検討した.さらに未変化のAII,その代謝物のAIII,Tyrおよびp-HPPA,並びに揮発性画分および蛋白画分の放射能濃度を測定した. 1.急速静脈内投与した際の血漿中放射能濃度は,投与後15secに雌雄それぞれ7.6および8.4ng/mlを示した後,2.5minまで半減期1.1および1.0minで減少した.投与後10~20minより一旦上昇した後,再度半減期1.1および3.0dayで減少した.雄性ラットにおいて,AIIおよびAIIIは投与後15secにそれぞれ総放射能の14.1%(以下同じ)および3.4%を示した.その後速...

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Published in薬物動態 Vol. 5; no. 6; pp. 925 - 952
Main Authors 堀, 勝行, 千田, 敏, 山下, 久美子, 神, 義容, 江角, 凱夫, 長井, 晶彦
Format Journal Article
LanguageEnglish
Japanese
Published 日本薬物動態学会 1990
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ISSN0916-1139
DOI10.2133/dmpk.5.925

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Summary:ラットに3H-AIIを静脈内投与したときの分布,代謝および排泄について検討した.さらに未変化のAII,その代謝物のAIII,Tyrおよびp-HPPA,並びに揮発性画分および蛋白画分の放射能濃度を測定した. 1.急速静脈内投与した際の血漿中放射能濃度は,投与後15secに雌雄それぞれ7.6および8.4ng/mlを示した後,2.5minまで半減期1.1および1.0minで減少した.投与後10~20minより一旦上昇した後,再度半減期1.1および3.0dayで減少した.雄性ラットにおいて,AIIおよびAIIIは投与後15secにそれぞれ総放射能の14.1%(以下同じ)および3.4%を示した.その後速やかに消失し,そのときの半減期は,それぞれ8.5および7.9secであった.Tyrおよびp-HPPAは,投与後15secにそれぞれ15.7%および15.5%を示した後,それぞれ半減期5.2および5.9minで消失した.雌性ラットにおける推移も同様であった. 2.持続静脈内投与したときの血漿中放射能濃度は,投与開始後徐々に増加し,投与開始後15minでは,雌雄それぞれ28.3および36.5ng/mlであった.投与終了後2.5minまで半減期2.4および2.2minで減少し,投与終了後10minより一旦上昇した後減少した. AIIおよびAIIIは,持続注入中はほぼ一定の濃度を示し,TyrおよびpHPPAは,持続注入とともに増加した.投与終了後はいずれも急速投与と同様に速やかに血漿中から消失した. 3,持続静脈内投与後の全身オートラジオグラムでは,腸内容物,膀胱内尿,膵臓,腎臓,骨髄,皮膚(毛根部),副腎(表面および髄質部),胃壁,鼻腔に最も高い放射能が認められ,ついで腸壁精嚢(壁),肺,肝臓松果体,下垂体,甲状腺,顎下腺,眼球(水晶体周辺),脾臓,ハーダー腺,心臓,包皮腺が高かった. 4.持続静脈内投与後の組織内放射能濃度は,それぞれ投与直後から24hrに最高濃度を示し,膵臓で最も高く,以下肝臓,骨髄,胃,腎臓,十二指腸,副腎,下垂体の順であった,各組織からの放射能の消失は極めて緩やかであった. 5,持続静脈内投与後の血漿中放射性物質は,AIIの代謝物のみならず,揮発性画分および蛋白画分に存在した.揮発性画分および蛋白画分は時間の経過とともに割合が増加した. 6.AII持続投与終了後,AII濃度は肝臓および腎臓で比較的高く,肺および心臓ではわずかであった.AIIの消失半減期は肝臓で8.9min,腎臓で10.1minであった.各組織における放射能は,時間経過とともに揮発性画分および蛋白画分で徐々に増加した. 7.in vitroにおける血漿蛋白結合率は,雄性ラット,雄性イヌおよび成人男子で51.6~56.3%であった. 8.In vivoにおける血漿中総放射能の蛋白結合率は,投与終了直後では,30.9%,投与終了後5minでは25.3%,30minでは68.4%,24hrでは62.0%,168hrでは35.3%であった. 9.持続静脈内投与したとき,投与開始後168hrまでの尿中に放射能が,雌雄それぞれ投与量の30.5および24.3%,糞中に9.2および9.8%,呼気に5.5および5.8%が排泄されたが,この時点では投与量の52.2および56.6%が体内に残存した.一方,投与終了後48hrまでの胆汁中に投与量の15.2%が排泄された.尿,糞および胆汁中には,AIIおよびAIIIは認められず,Tyrおよびp-HPPAがわずかに排泄されたほかは,大部分が揮発性画分として排泄された.
ISSN:0916-1139
DOI:10.2133/dmpk.5.925