当院における脊椎圧迫骨折患者の在院日数に影響する因子について 入院1週目の歩行自立度に着目して
【目的】高齢者の骨折で、脊椎圧迫骨折は頻度の高い骨折である。脊椎圧迫骨折を繰り返し、再発の恐れから安静期間が長く、廃用による在院日数の長期化が問題となっている。歩行と脊椎圧迫骨折の関連性に関して、脊椎圧迫骨折患者において、歩行練習開始が早いほど在院日数が減少すること(牛島2014)や、早期の歩行自立が、在院日数に影響を与えること(田中2015)が報告されている。そこで本研究では、当院における脊椎圧迫骨折患者の在院日数に影響を与える因子について、入院1週目の歩行能力に着目し検討することを目的とした。【対象】2015年4月~2016年1月までの10ヶ月間に、脊椎圧迫骨折の診断にて当院に入院し、入院...
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          | Published in | 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 p. 262 | 
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| Main Authors | , , , , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            九州理学療法士・作業療法士合同学会
    
        2016
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| Subjects | |
| Online Access | Get full text | 
| ISSN | 0915-2032 2423-8899  | 
| DOI | 10.11496/kyushuptot.2016.0_262 | 
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| Summary: | 【目的】高齢者の骨折で、脊椎圧迫骨折は頻度の高い骨折である。脊椎圧迫骨折を繰り返し、再発の恐れから安静期間が長く、廃用による在院日数の長期化が問題となっている。歩行と脊椎圧迫骨折の関連性に関して、脊椎圧迫骨折患者において、歩行練習開始が早いほど在院日数が減少すること(牛島2014)や、早期の歩行自立が、在院日数に影響を与えること(田中2015)が報告されている。そこで本研究では、当院における脊椎圧迫骨折患者の在院日数に影響を与える因子について、入院1週目の歩行能力に着目し検討することを目的とした。【対象】2015年4月~2016年1月までの10ヶ月間に、脊椎圧迫骨折の診断にて当院に入院し、入院1週目で歩行自立度がFunctional Independence Measure(以下FIM)6以上でTimed Up and Go Test(以下TUG)、10m歩行が実施可能な17名を対象とした(男性6名、女性11名、平均年齢:78.9±7.7歳、平均在院日数:44.1±18.4日)。なお、重篤な合併症、後壁損傷、圧迫骨折再発患者は除外した。【方法】全ての対象者において、年齢、臥床期間、受傷前歩行能力(独歩・杖・歩行器)、介護保険の有無、入院1週目のTUG、10m歩行(至適速度・最大速度)、骨折数(単椎・多椎)、認知症の有無、ギプス巻き込みの有無を後方視的に調査した。統計学的検討は、得られたデータをもとに、在院日数1ヶ月未満群と1ヶ月以上群の2群(1M未満群、1M以上群)に分類し、前述した項目ごとに、2群間で比較した。統計学的手法は、データの正規性を確認した上で対応のないt検定を用いて行った。また、2群間で有意差を認めた項目に関してはReceiver-Operating-Characteristic(以下ROC)曲線を用いて、Cut off値、感度、特異度を算出した。【結果】2群間の比較において、至適速度の10m歩行のみ1M未満群に対して、1M以上群で有意に高値を示し(p<0.05)、その他の項目では有意差を認めなかった。在院日数1M未満群と1M以上群とを分類する至適速度の10m歩行のCut off値は12.2秒で感度は0.90、特異度は0.86であった。一方、歩行時間が12.2秒未満であるが、在院日数が1ヶ月よりも延長した例が1例、歩行時間が12.2秒以上で、在院日数が1ヶ月よりも短縮した例が1例みられた。その内訳は、自宅復帰可能レベルであったが、家族の身体的な問題で、在院日数が延長した例と、受傷前レベルが歩行器歩行自立であり、1週目時点で歩行器歩行が自立となり、受傷前レベル達成のため、早期退院となった例であった。【考察】結果より、入院1週目歩行自立度が、FIM6以上の場合は、在院日数が1ヶ月未満か1ヶ月以上かを予測する指標として、至適速度の10m歩行テストが有用であった。また、そのCut off値は12.2秒であった。この結果より、至適速度の10m歩行が12.2秒未満であれば、1ヶ月未満での自宅復帰を検討し、また、12.2秒以上であれば、自宅復帰に時間を要することも考えられるため、早期より関連職種や家族との連携、家屋調査などが必要であると考える。また、今回のCut Off値と在院日数で解離が生じた例に関しては、家族背景や受傷前の歩行能力が関係していた。早期退院においては、社会的要因、疼痛、歩行安定性などの問題も関わると推測されるが、今回の感度・特異度の結果から、前述した問題があっても、殆どの例で入院1週目での至適速度の10m歩行を評価することで、在院日数を予測できる可能性が示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は、当院の学術研究に関する方針ならびにプライバシーポリシーを順守して行い、当院の倫理委員会の承認を得た。(承認日平成27年9月18日)利益相反はない | 
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| ISSN: | 0915-2032 2423-8899  | 
| DOI: | 10.11496/kyushuptot.2016.0_262 |