尿道狭窄の手術療法 V報 骨盤骨折による後部尿道狭窄の形成術後の尿失禁について

昭和41年から昭和60年までの過去20年間の骨盤骨折による後部尿道狭窄35例について尿失禁を検討した。合計3例で, 外傷によると思われる不完全尿失禁1例, 2回のTURによる完全尿失禁1例, 外傷直後の形成術によると思われる不完全尿失禁1例であった。骨盤骨折による後部尿道損傷は膜様部で, 外括約筋は破壊されるが膀胱頚部は損傷されず内括約筋は健全である。残った内括約筋を損傷しないために, (1) 外傷直後は膀胱瘻設置にとどめ, 即時 interlocking 法をやらない。(2) 膀胱瘻設置後, 完全尿道閉塞患者では形成術前に静止時の膀胱造影を行って, 膀胱頚部の閉鎖, つまり内括約筋の健全を確...

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Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 77; no. 3; pp. 415 - 420
Main Authors 田中, 一成, 大山, 登, 井上, 武夫, 工藤, 治, 長田, 尚夫, 黒田, 俊, 平野, 昭彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 1986
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ISSN0021-5287
1884-7110
DOI10.5980/jpnjurol1928.77.3_415

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Summary:昭和41年から昭和60年までの過去20年間の骨盤骨折による後部尿道狭窄35例について尿失禁を検討した。合計3例で, 外傷によると思われる不完全尿失禁1例, 2回のTURによる完全尿失禁1例, 外傷直後の形成術によると思われる不完全尿失禁1例であった。骨盤骨折による後部尿道損傷は膜様部で, 外括約筋は破壊されるが膀胱頚部は損傷されず内括約筋は健全である。残った内括約筋を損傷しないために, (1) 外傷直後は膀胱瘻設置にとどめ, 即時 interlocking 法をやらない。(2) 膀胱瘻設置後, 完全尿道閉塞患者では形成術前に静止時の膀胱造影を行って, 膀胱頚部の閉鎖, つまり内括約筋の健全を確認する。(3) 後日形成術に当って, 内括約筋の損傷に注意する。会陰部から到達する pull-through 法では, 硬い瘢痕のみを切除し軟かい健全な組織を切除しない。 健全な膀胱頚部は軟かく, かつ視野の奥より尚示指一節分中枢にあるから損傷することはない。尿道狭窄の治療にあたり, 手術などで尿失禁をおこさぬように注意することが大切である。
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.77.3_415