膀胱腫瘍の臨床統計的観察 第3報 予後と性差

1,120例の膀胱腫瘍患者について, 臨床病理所見の性差を検討した. 全症例の腫瘍発生率の性比は, 約3:1であり, 60歳以上ではその比率が有意に減少した (p<0.025). そして女子は男子に較べ有意に予後不良であった. そこで今回は予後における性差に影響を与える因子を探るために, 組織学的悪性度, 深達度, 腫瘍の数, 腫瘍の大きさ, 治療法について統計学的解析を行なった. 同一患者群における前回の報告では, 60歳以上の患者群の予後が若い群より有意に悪いことを認めているので, 男女とも60歳未満と以上の2群に分けて検討した. 60歳未満の群では男女間の生存率に有意差が認められな...

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Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 77; no. 4; pp. 612 - 617
Main Authors 斉藤, 隆, 福井, 巌, 関根, 英明, 大島, 博幸, 根岸, 壮治, 田利, 清信, 山田, 拓己, 酒井, 邦彦, 大和田, 文雄, 岡, 薫, 石渡, 大介, 横川, 正之, 鷲塚, 誠, 野呂, 彰, 河合, 恒雄, 細田, 和成, 皿田, 敏明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 1986
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ISSN0021-5287
1884-7110
DOI10.5980/jpnjurol1928.77.4_612

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Summary:1,120例の膀胱腫瘍患者について, 臨床病理所見の性差を検討した. 全症例の腫瘍発生率の性比は, 約3:1であり, 60歳以上ではその比率が有意に減少した (p<0.025). そして女子は男子に較べ有意に予後不良であった. そこで今回は予後における性差に影響を与える因子を探るために, 組織学的悪性度, 深達度, 腫瘍の数, 腫瘍の大きさ, 治療法について統計学的解析を行なった. 同一患者群における前回の報告では, 60歳以上の患者群の予後が若い群より有意に悪いことを認めているので, 男女とも60歳未満と以上の2群に分けて検討した. 60歳未満の群では男女間の生存率に有意差が認められなかったが, 60歳以上の群では女子の5年生存率 (56.4%) は男子 (71.9%) に較べて有意に低かった(p<0.05). 60歳未満の群では, 浸潤癌の頻度が男子 (28%) に較べ女子 (43%) に有意に高い (p<0.05) 以外は有意差を認めなかったが, 60歳以上の群では, high grade (grade 3) の腫瘍, 浸潤癌 (>T2), 多発性腫瘍の頻度が, 男子 (各々35%, 34%, 及び35%) に較べ女子 (各々42%, 44%, 及び45%) に有意に高かった (p<0.05). 又, 男子に比較して, 60歳以上の女子ではTURを受けた患者の頻度は低く, 姑息的な治療の頻度が有意に高くなっていた (p<0.005). これらの因子が集約して60歳以上の女子膀胱腫瘍患者の予後を悪くしているものと思われた.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.77.4_612