顎関節症患者におけるクリックの経過について クリック単独症例を中心に

近年顎関節症の来院患者数が増加しているが, その中には疼痛や開口障害を経験したことのない, クリック単独の患者も少なくない。 1992年4月から12月までの問に当科に来院した顎関節症患者761名のうち初診時までに疼痛や, 開口障害を経験したことのないIII型レシプロカルクリック単独の34症例の中, リコールに応じた22症例の臨床的検討を行った。また, クリックを初発症状とし, 初診時に疼痛や開口障害を伴ったIII型55症例 (有痛性クリック36例, クローズド・ロック19例) との比較検討を行った。 その結果, クリック消失, 軽減, 不変群間に治療法の違いによる差は認められなかった。また平均...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published inTMJ : journal of Japanese Society for Temporomandibular Joint : 日本顎関節学会雑誌 Vol. 8; no. 3; pp. 526 - 533
Main Authors 天笠, 光雄, 和気, 裕之, 小林, 明子, 鈴木, 和彦, 渋谷, 智明, 大村, 欣章, 木野, 孔司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本顎関節学会 20.12.1996
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0915-3004
1884-4308
DOI10.11246/gakukansetsu1989.8.526

Cover

More Information
Summary:近年顎関節症の来院患者数が増加しているが, その中には疼痛や開口障害を経験したことのない, クリック単独の患者も少なくない。 1992年4月から12月までの問に当科に来院した顎関節症患者761名のうち初診時までに疼痛や, 開口障害を経験したことのないIII型レシプロカルクリック単独の34症例の中, リコールに応じた22症例の臨床的検討を行った。また, クリックを初発症状とし, 初診時に疼痛や開口障害を伴ったIII型55症例 (有痛性クリック36例, クローズド・ロック19例) との比較検討を行った。 その結果, クリック消失, 軽減, 不変群間に治療法の違いによる差は認められなかった。また平均病悩期間においては消失群と不変群間に有意差が認められたが, 平均通院期間, 平均経過観察期間, クリックの発現ないし経過への関連要因には有意差は認められなかった。同様の項目による疼痛を伴うクリック群, クローズド・ロック群との多群間比較においては, 側方運動障害の有無でクリック単独群とクローズド・ロック群問に有意差がみられたほか, 特に有意差は認められなかった。また, 疼痛を伴うクリック群とクローズド・ロック群において, その外傷的な増悪契機の有無を検討したが, 明確な関係はみられなかった。 以上より, クリック単独の場合, 治療による差はほとんどみられず, 放置していても必ずしも病態が悪化するとはかぎらないことを示唆するものと思われた。
ISSN:0915-3004
1884-4308
DOI:10.11246/gakukansetsu1989.8.526