高齢者の健康づくりに効果的な住居内階段の仕様について 骨粗鬆症予防を中心として

本研究は骨粗鬆症予防を中心とした健康づくりに役する住居内階段の仕様について80歳代までの高齢者32名を対象として,脚筋からの筋電図と階段昇降時の床反力の面から検討した。また,この基礎をなす能力として,高齢者の動的脚筋力の基準値とその筋電図も調べた。まず,階段の登行では,蹴上げを5~20cm,路面を20~50cmに変化させたが,これらの変化にも,身長・体重にも依存せず,筋放電では一様な様相を示した。この登行を脚部の負荷増加に利して緩徐な速度で実施すると,筋放電からみる負荷量は大きくなったが,その他は概ね通常の登行速度の場合と同様な結果が得られた。運動生理学的には,動作の効率化に関する何らかの調整...

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Published in住宅総合研究財団研究年報 Vol. 23; pp. 217 - 226
Main Authors 深山, 智代, 福地, 保馬, 村岡, 卓哉, 川初, 清典, 晴山, 紫惠子, 山本, 廣子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般財団法人 住総研 1997
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ISSN0916-1864
2423-9879
DOI10.20803/jusokennen.23.0_217

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Summary:本研究は骨粗鬆症予防を中心とした健康づくりに役する住居内階段の仕様について80歳代までの高齢者32名を対象として,脚筋からの筋電図と階段昇降時の床反力の面から検討した。また,この基礎をなす能力として,高齢者の動的脚筋力の基準値とその筋電図も調べた。まず,階段の登行では,蹴上げを5~20cm,路面を20~50cmに変化させたが,これらの変化にも,身長・体重にも依存せず,筋放電では一様な様相を示した。この登行を脚部の負荷増加に利して緩徐な速度で実施すると,筋放電からみる負荷量は大きくなったが,その他は概ね通常の登行速度の場合と同様な結果が得られた。運動生理学的には,動作の効率化に関する何らかの調整の機能が関与した一様性と考えられた。降段動作は運動生理学上,筋労作はネガティブワークになり筋トレーニングに効果的である。この動作では,蹴上げの規模に依存して筋放電量が変化した。緩徐な速度の降段では脚筋の持続的な放電が強化され,下肢骨への優れた負荷刺激に機能していると判断された。降段動作では蹴上げ15cmで被検者共通に快適感が報告されたが,20cmでは落下衝撃による不快感が訴えられ,それは床反力の面からも裏付けられた。降段に対する路面変化に対して35cmで快適感が強く,動作は安定した。それ以下では動作範囲が狭小化した筋放電様相になり,また落下感が強かった。逆にそれ以上では歩幅が移動上無理になって動作に不自然感が強くなり,筋電図的にもその態様が判読された。以上の諸点は床反力の資料によっても共通な所見となった。結果的に蹴上げが15cm,路面が35cmの仕様が高齢者に安定な動作を供し,優れた脚負荷をもたらすと判断され健康階段として考えられた。住居内では路面が大き過ぎて非現実的だが,道路と玄関やベランダと庭の連絡階段には現実的な仕様と考えられた。
ISSN:0916-1864
2423-9879
DOI:10.20803/jusokennen.23.0_217