東アジア諸国における都市集合住宅の近代化過程(2) 台湾インドネシアの都市住宅の住まい方

本研究の目的は,「都市集合住宅の近代化過程」が「社全体制の違い」,「伝統的住文化との軋轢,融合」,「西欧諸国による影響」といかなる関係をもっているかを分析することである。初年度は中国,2年度は対象を台湾,インドネシアに広げ,調査研究を行なった。台湾では,都市集合住宅は(1)民間デベロッパーによる公寓や大厦として供給されることによって,(2)一般的な形式として普及しており,質的にも水準の高いものが大量に供給されつつある。(3)平面構成にみられるようにアメリカの影響,伝統的な街屋の影響(販そ)や,一部「和室」といった形で日本の影響も残っている。(4)又,文化大革命などを経た中国本土に比べると,生活...

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Published in住宅総合研究財団研究年報 Vol. 22; pp. 133 - 146
Main Authors 中園, 眞人, 小林, 秀樹, 友清, 貴和, 東樋口, 護, 須田, 松次郎, 大屋, 道夫, 藤田, 忍, 小林, 英之, 林, 建平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般財団法人 住総研 1996
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ISSN0916-1864
2423-9879
DOI10.20803/jusokennen.22.0_133

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Summary:本研究の目的は,「都市集合住宅の近代化過程」が「社全体制の違い」,「伝統的住文化との軋轢,融合」,「西欧諸国による影響」といかなる関係をもっているかを分析することである。初年度は中国,2年度は対象を台湾,インドネシアに広げ,調査研究を行なった。台湾では,都市集合住宅は(1)民間デベロッパーによる公寓や大厦として供給されることによって,(2)一般的な形式として普及しており,質的にも水準の高いものが大量に供給されつつある。(3)平面構成にみられるようにアメリカの影響,伝統的な街屋の影響(販そ)や,一部「和室」といった形で日本の影響も残っている。(4)又,文化大革命などを経た中国本土に比べると,生活様式には中国の伝統的な宗教的要素も残っており,その文化的な融合と矛盾は今後の中国本土の近代化を考えるうえでも,有効である。インドネシアでは,都市集合住宅は(1)カンポン再開発事業などにおける公共住宅供給及び近年ジャカルタ等にみられる高級住宅という両極が存在しているものの,その中間が存在せず(2)したがって一般には抵抗が強く,普及していないといってよい。その理由として(3)第一に建設コストと所得との乖離の問題,第二に伝統的な接地型の生活様式が根強く残っている点があげられ,これらをうまく経済的,空間的に処理しえた場合のみ集合住宅が庶民の住宅として受け入れられている。ここで伝統的な接地型の生活様式というのは,「カマルタム(ルアンタム)」,廊下や踊り場の「テラス的」な使われ方などをさす。(4)オランダや他の西欧諸国の直接的な影響は今回の調査研究においては確認されていない。以上の結果に初年度の中国の知見および我が国を視野にいれ,都市集合住宅の近代化過程の比較考察を行ない結論とした。
ISSN:0916-1864
2423-9879
DOI:10.20803/jusokennen.22.0_133