成長期野球選手における上腕骨内側上顆障害の発症要因の検討 立位アライメントに着目して
【目的】 成長期の投球障害において最も発生頻度が高い上腕骨内側上顆障害の原因として,投球動作の乱れや柔軟性の低下,筋力不足を問題とする報告が多い.しかし,成長期は特有の身体特性を有するにも関わらず,それを踏まえた報告は少ない.そこで今回,上腕骨内側上顆障害を有する成長期野球選手の立位アライメントに着目し,障害への影響を明らかにすることを目的とした. 【方法】 対象は2009年5月から2010年10月までに当院スポーツ外来を受診し,上腕骨内側上顆障害と診断された骨端線閉鎖前の成長期野球選手50名.平均年齢は11.6±1.6歳であった.評価項目は立位アライメント,上肢・下肢・体幹の筋力とタイトネス...
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          | Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 160 | 
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| Main Authors | , , , , , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
    
        2011
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| Subjects | |
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| ISSN | 0916-9946 2187-123X  | 
| DOI | 10.14901/ptkanbloc.30.0.160.0 | 
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| Summary: | 【目的】 成長期の投球障害において最も発生頻度が高い上腕骨内側上顆障害の原因として,投球動作の乱れや柔軟性の低下,筋力不足を問題とする報告が多い.しかし,成長期は特有の身体特性を有するにも関わらず,それを踏まえた報告は少ない.そこで今回,上腕骨内側上顆障害を有する成長期野球選手の立位アライメントに着目し,障害への影響を明らかにすることを目的とした. 【方法】 対象は2009年5月から2010年10月までに当院スポーツ外来を受診し,上腕骨内側上顆障害と診断された骨端線閉鎖前の成長期野球選手50名.平均年齢は11.6±1.6歳であった.評価項目は立位アライメント,上肢・下肢・体幹の筋力とタイトネスであった.立位アライメントは,Kendallの分類に従いIdeal Alignment(IA)・Kyphosis Lordsis posture(KL)・Flat Back posture(FB)・Sway Back posture(SB)に分類した.タイトネスの評価としてCombined Abduction Test(CAT),Horizontal Flexion Test(HFT),肩関節90°外転位内旋(2nd内旋)・肩関節90°外転位外旋(2nd外旋),屈曲90°内旋(3rd内旋)を測定し投球側と非投球側の可動域を比較した.体幹下肢の支持性の評価として,片脚立位,片脚ブリッジ,フロントランジを両側おこなった.片脚立位・片脚ブリッジは支持側の動揺を比較し,フロントランジはステップ側の動揺を比較した. 【結果】 立位アライメントはIA:2.0%,KL:57.7%,FB:7.7%,SB:30.0%であった.上肢・肩甲帯の可動域は96.0%に投球側に何らかの可動域の低下が認められた.特に高い割合で可動域低下が認められたのは,HFT(74.0%),2nd内旋(56.0%),3rd内旋(38.0%)であった.下肢体幹の筋力評価では,片脚ブリッジと片脚立位においてステップ側の不安定性を認める例が多かった. 【考察】 本調査では,肩後方構成体のタイトネスや下肢体幹の筋力不足が多く見られたが,それらは過去の報告と同様の傾向であった.今回は立位アライメントに着目し,上腕骨内側上顆障害との関係について考察する. 投球動作において「肘下がり」が肘関節外反ストレスを強め,上腕骨内側上顆障害の誘因となることが広く知られている.井尻らは,早期コッキング期に胸椎後弯を呈する投球動作により,後期コッキング期から加速期に「肘下がり」となるとしている.今回の対象の立位アライメントはKL・FB・SBが約95%とその殆どを占めており,その3タイプは胸椎後弯を呈する.胸椎後弯により肩甲骨の動きが制限され「肘下がり」が生じ,上腕骨内側上顆障害の誘因となっている可能性がある.今後は,障害を持たない成長期野球選手との比較をおこない,上腕骨内側上顆障害の予防策を構築していきたい. 【まとめ】 成長期の上腕骨内側上顆障害について,成長期特有の立位アライメントがその誘因である可能性を示唆した. | 
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| Bibliography: | P1-5-046 | 
| ISSN: | 0916-9946 2187-123X  | 
| DOI: | 10.14901/ptkanbloc.30.0.160.0 |