投球障害を有する高校球児における肩峰指数の調査 投球側と非投球側を比較して

【はじめに】 肩峰指数(Acromion Index:以下AI)はX線正面像で上腕骨頭に対する肩峰の外側への拡がりを数値化したものであり、腱板断裂や肩峰下インピンジメントを有する者では数値に差があることが報告されている。今回、投球障害を有する高校球児を対象に、投球側および非投球側での肩峰指数を比較し、さらにインピンジメントの有無による影響を検討することとした。 【方法】 2004年4月から2010年3月までに投球障害肩で理学療法を実施した高校球児の中で、両肩のX線画像がある者23名を対象に、肩峰下インピンジメント(Neer、Ellman、Hawkinsのいずれかで陽性)を有する16名32肩(陽...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 162
Main Authors 加藤, 和夫, 粕山, 達也, 川越, 誠, 青柳, 壮志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.30.0.162.0

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Summary:【はじめに】 肩峰指数(Acromion Index:以下AI)はX線正面像で上腕骨頭に対する肩峰の外側への拡がりを数値化したものであり、腱板断裂や肩峰下インピンジメントを有する者では数値に差があることが報告されている。今回、投球障害を有する高校球児を対象に、投球側および非投球側での肩峰指数を比較し、さらにインピンジメントの有無による影響を検討することとした。 【方法】 2004年4月から2010年3月までに投球障害肩で理学療法を実施した高校球児の中で、両肩のX線画像がある者23名を対象に、肩峰下インピンジメント(Neer、Ellman、Hawkinsのいずれかで陽性)を有する16名32肩(陽性群)、他の投球障害肩をもつ7名14肩(陰性群)で、投球側・非投球側のAIを測定した。AIは診療放射線技師が撮影した肩関節内外旋中間位X線正面像で、肩峰の外側端から肩甲骨関節窩面までの距離(GA)と、上腕骨頭外側面と肩甲骨関節窩面までの距離(GH)で測定し、GAをGHで除して求めた。陽性群・陰性群それぞれの投球側および非投球側とで比較し、統計学的処理にはt検定を用い、有意水準を5%とした。 【説明と同意】 今回の調査はX線画像により後方視的にデータ収集を行い、診療データに関しては、病院長による許可を得て疫学研究に関する倫理指針に則って取り扱った。 【結果】 陽性群16名のAIは投球側が0.63±0.06、非投球側が0.64±0.06となり、有意差はみられなかった。陰性群7名のAIは投球側が0.68±0.08、非投球側が0.69±0.06となり有意差はみられなかった。 【考察】 今回の結果から、インピンジメント陽性群および陰性群のAIは投球側と非投球側で大きな差はみられず、16~18歳の骨化時期における投球が肩峰の外側への拡がりに影響するとはいえなかった。先行研究では、骨関節の変形や腱板損傷のない正常肩をもつ平均年齢65歳を対象に調査した結果、利き手側のAIが0.64±0.06であったと報告しており、今回の高校球児の投球側AIと比較しても有意差はみられなかった。よって骨形態の変化に関しては、年齢以外の様々な要因があると考えられる。今後は機能面での多角的評価などからも、その要因を明らかにしていく必要がある。
Bibliography:P1-5-048
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.162.0