家空間の現象学的分析 空間・心埋・イメージ対応の計画試論

本研究では,伝統的住宅に対する思い出調査,現代の最新住宅に対する居住者意識調査・今後の住宅への憧れ調査により,過去・現在・未来にわたって心象風景や価値観を含むイメージから住宅を考えた。まず過去では,日本の伝統的住宅の流れを心象風景から追い,現代住宅が失った伝統的家空間の意味。現代住宅に残存する廊下の変質を明らかにする。次に現在から,新しい試みの多摩NT南大沢を調査し,一般的な公私分離型より廊下の無いLホール型が若い家族に評価されることを指摘する。同時に,居間の吹抜けを囲む室構成で,居間の中心に階段が下りてくる家を「金持ちの家」,吹抜けの中を空中廊下が走る家を「リゾート気分」,ミニキッチンやシャ...

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Published in住宅総合研究財団研究年報 Vol. 17; pp. 115 - 124
Main Authors 友田, 博通, 金子, 友美, 高嶋, 玲子, 山崎, 由美子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般財団法人 住総研 1991
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ISSN0916-1864
2423-9879
DOI10.20803/jusokennen.17.0_115

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Summary:本研究では,伝統的住宅に対する思い出調査,現代の最新住宅に対する居住者意識調査・今後の住宅への憧れ調査により,過去・現在・未来にわたって心象風景や価値観を含むイメージから住宅を考えた。まず過去では,日本の伝統的住宅の流れを心象風景から追い,現代住宅が失った伝統的家空間の意味。現代住宅に残存する廊下の変質を明らかにする。次に現在から,新しい試みの多摩NT南大沢を調査し,一般的な公私分離型より廊下の無いLホール型が若い家族に評価されることを指摘する。同時に,居間の吹抜けを囲む室構成で,居間の中心に階段が下りてくる家を「金持ちの家」,吹抜けの中を空中廊下が走る家を「リゾート気分」,ミニキッチンやシャワーのある屋根裏部屋がある家を「ヨーロッパのアパート」など,「空間が明確な生活イメージをかきたて,本当に空間を気に入った」と感じさせる例を報告する。未来では,5歳童話作用・10歳現実化・15歳具体化・20歳差別化・30~40歳代メディア作用など,年齢別に住宅への憧れイメージを整理する。そして人間の住空間の評価プロセスは,「空間を見てトータルな生活イメージを持ち,その生活イメージから空間を評価する」,「夢があると感じと住みたいと感じること」を明らかにする。これらの検討から,現代の一般的な住宅は,本来文化的であった日本の伝統的な住宅が平等・合理・機能といった観点から手術されて生じた粗野な住まいの原形と視定され,今後は「居住者にイメージを与え夢があると感じさせる住宅」に成熟することが重要と結論される。具体的には,今回の調査からは「居間が吹抜けで居間を囲む室構成を持ち,さらに空間的特徴が付加された型」もその方向の1つであることを提起したが,今後さらに「居住者にイメージを与え夢があると感じさせる住宅」が何か,居住者類型への対応を含めさまざまな形で模索していかなくてはならないと言えよう。
ISSN:0916-1864
2423-9879
DOI:10.20803/jusokennen.17.0_115