臍帯血ミニ移植前後の理学療法 自宅復帰となった症例を経験して

【はじめに】当院では血液内科患者に理学療法(PT)が介入している症例は、2005年4月からの1年間の中で53症例あり、そのうち臍帯血ミニ移植(ミニ移植)を施行した例は11例であった。その中でも、自宅退院が2例、死亡退院が9例であり、ミニ移植施行患者の自宅復帰は困難な場合が多い。今回ミニ移植を施行し、著明な日常生活活動(ADL)能力低下を認めずに自宅退院した、骨髄異形成症候群(MDS)患者の移植評価について報告する。 【症例紹介】68歳、男性。2002/11再生不良性貧血、MDS疑いにて入院、退院後外来フォローしていた。2005/9 MDSと診断され、12/7ミニ移植目的にて当院準クリーンルーム...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 31
Main Authors 太田, 理恵, 斉藤, 秀之, 飯塚, 陽, 小松, 恒彦, 小関, 迪, 松川, 亜希子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2006
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.25.0.31.0

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Summary:【はじめに】当院では血液内科患者に理学療法(PT)が介入している症例は、2005年4月からの1年間の中で53症例あり、そのうち臍帯血ミニ移植(ミニ移植)を施行した例は11例であった。その中でも、自宅退院が2例、死亡退院が9例であり、ミニ移植施行患者の自宅復帰は困難な場合が多い。今回ミニ移植を施行し、著明な日常生活活動(ADL)能力低下を認めずに自宅退院した、骨髄異形成症候群(MDS)患者の移植評価について報告する。 【症例紹介】68歳、男性。2002/11再生不良性貧血、MDS疑いにて入院、退院後外来フォローしていた。2005/9 MDSと診断され、12/7ミニ移植目的にて当院準クリーンルームへ入院、同日よりPT開始した。PTでは廃用予防目的の下肢・体幹ストレッチ、筋力維持・強化練習を中心に実施した。12/8ミニ移植前処置開始し、12/16ミニ移植施行。移植後、移植片対宿主病(GVHD)様の症状出現、心身機能の低下が認められた。2006/1/6生着を確認、準クリーン管理終了し、1/29よりリハビリ室でのPTを開始。2006/2/8自宅退院となった。 【方法】当院の移植評価項目は、形態測定・血液データ・筋力・ADL・QOL・心理状態・自覚症状である。血液データはカルテからの情報収集にて行い、下肢筋力はハンドヘルドダイナモメーター(HHD)により、右膝体重比伸展筋力(WBI)を測定した。ADLはFIMを使用、QOL・心理状態については、Short-Form36(SF36)とSelf-Rating Depression(SDS)を実施した。今回はこれらの評価を、約2週間に1回の割合で実施した。 【結果】SF36においては、入院時日常役割機能:身体・精神(RE):43.75・25.0、活力(VT):12.5、心の健康(MH):23.8に比べ、移植後はRE:18.8・16.7、VT:6.25、MH:14.3と点数の減少がみられた。その後、生着時・退院時と徐々に点数の増加がみられ、退院時はRE:50.0・33.3、VT:12.5、MH:28.6であった。FIMにおいては、入院時114点、移植後89点、退院時110点であり、入院時のADLレベルを獲得した。 【考察】本症例はミニ移植施行後、一時的に全身状態の悪化と共に著しい精神面の低下がみられ、PT継続に難渋した。今回の経験から、ミニ移植患者は心身機能のup-downがあり、PT継続が困難になりやすいと思われた。血液疾患患者の場合、訓練の継続だけでなく、全身状態の把握・理解と共に、適切な対応が重要であると示唆された。
Bibliography:31
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.25.0.31.0