効果的な中殿筋強化肢位の検討 体幹最大側屈位における筋活動に着目して

【目的】臨床現場において、側臥位での股関節外転運動時に骨盤挙上や体幹の側屈などの代償運動が出現しているのをしばしば目にする。代償運動を抑え、より中殿筋を選択的に強化可能な肢位の検討が必要であると考えた。上肢支持体幹最大側屈位での股関節外転運動は骨盤の代償が少なく、体幹筋の筋活動を抑え、中殿筋をより選択的に働かせることが可能な肢位であると考えた。今回我々は、前述した肢位での股関節外転運動における体幹筋、中殿筋の活動の違いを明らかにすることを目的とした。 【方法】対象は整形外科的疾患の既往のない健常成人男性11名(平均年齢29.8歳±5.1歳)とした。なお、被検者には本研究の趣旨を説明し同意を得た...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 70
Main Authors 新井, 美紗, 福山, 勝彦, 舘川, 康任, 清水, 弥生, 小山内, 正博, 南島, 大輔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2007
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.26.0.70.0

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Summary:【目的】臨床現場において、側臥位での股関節外転運動時に骨盤挙上や体幹の側屈などの代償運動が出現しているのをしばしば目にする。代償運動を抑え、より中殿筋を選択的に強化可能な肢位の検討が必要であると考えた。上肢支持体幹最大側屈位での股関節外転運動は骨盤の代償が少なく、体幹筋の筋活動を抑え、中殿筋をより選択的に働かせることが可能な肢位であると考えた。今回我々は、前述した肢位での股関節外転運動における体幹筋、中殿筋の活動の違いを明らかにすることを目的とした。 【方法】対象は整形外科的疾患の既往のない健常成人男性11名(平均年齢29.8歳±5.1歳)とした。なお、被検者には本研究の趣旨を説明し同意を得た上で測定を行なった。右広背筋、右内外腹斜筋、右中殿筋を導出筋として電極を運動点中心に30mmで貼付した。各筋活動を表面筋電計(Mega Electronics社製ME-3000)にて導出、AD変換しパーソナルコンピューターに保存、波形解析ソフト(Mega-win)にて解析した。課題動作は独自に作成したバンドを上部体幹に装着し、左側臥位にて上肢支持体幹最大側屈位を他動的に設定し股関節屈伸、内外転、内外旋中間位にて3秒間の股関節外転最大等尺性収縮を行った。同様に側臥位での股関節外転最大等尺性収縮を行い、各筋の積分値(以下IEMG)を求め、これを100%として正規化(%IEMG)し比較検討した。統計処理には対応のあるt検定を用い有意水準は5%とした。 【結果】体幹最大側屈位における%IEMGについて、中殿筋、内腹斜筋は統計学的に有意差は認められなかった。一方で広背筋、外腹斜筋は側臥位に比して増加傾向を示し有意差が認められた(p<0. 05)。 【考察】千島らは、側臥位で上肢支持した体幹最大側屈位は、骨盤の代償が少ないとして推奨している。今回の研究で我々は、体幹筋に着目し上肢支持にて保持することによる体幹筋の筋活動を抑え、中殿筋をより選択的に働かせるために独自に作成したバンドにて他動的な体幹最大側屈位を設定した。中殿筋は先行研究同様に有意差が認められず、上肢、体幹の状態に影響を受けず高い筋活動を発揮できることが明確になった。一方で外腹斜筋、広背筋などの上部体幹筋の活動において、筋が短縮位であり働きづらい状況下にあるものの優位に増加する傾向がみられた。これは、体幹最大側屈位の設定にバンドを用いており、体幹における支持面が上部体幹のみであることから体幹が不安定となり、固定性を得るために筋活動が増加したものと考えられる。今回の結果や先行研究を踏まえると、上肢や体幹の条件設定が重要であり、再考の余地がある。体幹筋の活動を抑え、より選択的に中殿筋を強化できる条件設定の再検討を今後の課題としたい。
Bibliography:70
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.26.0.70.0