症例 Axillo-femoral bypass graft造設後も進行性に左心機能低下をきたした高安動脈炎の1例 高安動脈炎における心筋障害の考察
高安動脈炎に一次的な心筋障害が合併しうるとの報告が散見されるが,本邦における左心不全例の大部分は,高血圧や大動脈弁逆流による二次的変化か,冠動脈病変が原因と考えられていた.我々は,明らかな進行のない大動脈弁閉鎖不全を合併する高安動脈炎の33年にわたる臨床経過において,高血圧症によるとは考えられない進行性の心筋収縮不全から左心不全をきたした症例を経験した.症例は51歳,女性で,18歳時高安動脈炎と診断され,約1年間prednisolone治療を受けた.以後種々の降圧薬投与で血圧は管理されていたが,45歳時左心不全に陥った.入院中,大動脈狭窄による後負荷増大の軽減のためaxillo-femoral...
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Published in | 心臓 Vol. 29; no. 9; pp. 783 - 788 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益財団法人 日本心臓財団
15.09.1997
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Subjects | |
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ISSN | 0586-4488 2186-3016 |
DOI | 10.11281/shinzo1969.29.9_783 |
Cover
Summary: | 高安動脈炎に一次的な心筋障害が合併しうるとの報告が散見されるが,本邦における左心不全例の大部分は,高血圧や大動脈弁逆流による二次的変化か,冠動脈病変が原因と考えられていた.我々は,明らかな進行のない大動脈弁閉鎖不全を合併する高安動脈炎の33年にわたる臨床経過において,高血圧症によるとは考えられない進行性の心筋収縮不全から左心不全をきたした症例を経験した.症例は51歳,女性で,18歳時高安動脈炎と診断され,約1年間prednisolone治療を受けた.以後種々の降圧薬投与で血圧は管理されていたが,45歳時左心不全に陥った.入院中,大動脈狭窄による後負荷増大の軽減のためaxillo-femoral bypass graftが造設され,以後,血圧,腎機能,下肢血流は良好に維持されていたが,49歳以後左心不全で入退院を繰り返している.1994年(49歳)入院時の心エコー図では,中等度の大動脈弁逆流,左室の拡張とび漫性左室壁運動低下を認め,心臓カテーテル検査では,axillo-femoralbypass graft造設前と比べ,右心圧の上昇と左心機能の低下が認められた.最近の心臓核医学検査では,左心室での血流代謝不均衡の存在が示唆され,HLAtypingではBw52陽性であった.Axillo-femoralbypass graftにより後負荷増大の軽滅を図ったにもかかわらず進行した左心不全の原因として,高安動脈炎による一次的心筋障害も考慮されるべきであると |
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ISSN: | 0586-4488 2186-3016 |
DOI: | 10.11281/shinzo1969.29.9_783 |