矢状面での姿勢制御に着目した内側型変形性膝関節症の症例報告 運動連鎖に着目した治療で結果が出せなかった一例
【はじめに】内側型変形性膝関節症患者は、内側コンパートメントのメカニカルストレスによって痛みを呈し、前額面のマルアライメントに対して理学療法を施すことがある。しかし、本症例は前述の理学療法を行うも結果が出せなった。今回この原因を再考し、矢状面での姿勢制御に着目した理学療法を展開、T字杖歩行から仕事中の痛み改善に至った症例について報告する。 【症例】症例は本報告の主旨を説明し、同意が得られた症例である。60歳代男性。診断名は右変形性膝関節症。仕事はとび職。病期はKallgren-Lawrence分類でgrade_III_。主訴は歩行時痛。既往歴は幼少期に右脛骨骨折。平成19年頃より痛み出現し、T...
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Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 26 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2010
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Subjects | |
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ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.29.0.26.0 |
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Summary: | 【はじめに】内側型変形性膝関節症患者は、内側コンパートメントのメカニカルストレスによって痛みを呈し、前額面のマルアライメントに対して理学療法を施すことがある。しかし、本症例は前述の理学療法を行うも結果が出せなった。今回この原因を再考し、矢状面での姿勢制御に着目した理学療法を展開、T字杖歩行から仕事中の痛み改善に至った症例について報告する。 【症例】症例は本報告の主旨を説明し、同意が得られた症例である。60歳代男性。診断名は右変形性膝関節症。仕事はとび職。病期はKallgren-Lawrence分類でgrade_III_。主訴は歩行時痛。既往歴は幼少期に右脛骨骨折。平成19年頃より痛み出現し、T字杖歩行となる。症状増悪時には、薬物療法と関節内注射を施行した。 【評価】痛みは右膝内側裂隙部、歩行右立脚期で出現。VASは7.0。右FTA190°。ROM-Tは右膝屈曲120°/伸展-15°。Q-angleは左<右。右脛骨は外旋位で外側凸の弯曲を呈し、果部捻転角は右25°、左20°。立位姿勢は胸椎後弯、骨盤後傾・骨盤前方移動、股関節外旋・伸展、膝関節軽度屈曲・内反。上半身重心は下肢重心と比べ後方。身体重心は支持基底面内の後方にある。歩行は、右立脚期に右膝外側スラストあり。下肢・体幹筋力は歩行等に対応出来うる能力あり。 【経過1】病態は圧縮による内側裂隙部の痛み。その原因は右脛骨形態異常もあるが、立位姿勢での骨盤後傾による膝内反が原因していると考察し骨盤後傾位修正を図ったが、1ヶ月施すも痛みの改善に至らなかった。 【再考】筋力や可動域などの機能はあるにも関わらず、なぜ立位矢状面上の姿勢が後方重心になっているか再評価。支持基底面を前足部のみに制限し、立位保持を評価。結果、保持出来ずに後方に倒れた。このことから前方への重心移動が苦手なため後方重心にし、安定を確保している戦略をとっていると考えた。しかしその戦略により前額面のマルアライメントが生じ、痛みが出現していると考えた。 【経過2】矢状面での重心後方化修正のため、段差を利用し重心コントロールを促した。治療直後、立位姿勢に変化が認められた為、継続して治療を展開。1ヶ月後痛み軽減。2ヶ月後VAS4.0。杖も外れる。3ヶ月後仕事中の痛み軽減。5ヶ月後VAS0.7。治療前立位姿勢でも後方重心は改善した。 【おわりに】近年、痛みの原因を運動連鎖から探る重要性が提唱されてきている。今回の症例を通じ、姿勢制御の戦略により運動連鎖に乱れが生じていることを再考できた。今後は、姿勢制御と運動連鎖の関連性も加味した理学療法を展開していきたい。 |
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Bibliography: | 76 |
ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
DOI: | 10.14901/ptkanbloc.29.0.26.0 |