後期高齢入院患者における歩行自立度の判定に関する検討 下肢筋力指標とバランス能力指標の関連について

【目的】 日常生活動作には,様々な身体機能が影響している.これらの各機能は,加齢に伴い低下し,歩行障害や転倒の原因となる.この変化は,75歳以上で加速的に低下するとの報告が多い.筋力に関しては,一定の歩行能力を有するための下肢筋力閾値について報告されている.しかし,筋力指標のみでは,歩行自立度の判定が困難な事があり,他の身体機能因子を併用することで,その判別精度が上昇する可能性がある.本研究の目的は,後期高齢入院患者を対象とし,筋力指標と簡便なバランス能力指標を併用し,歩行自立に必要なカットオフ値を抽出することである. 【方法】 対象は,20秒以上の立位保持が可能な75歳以上の入院患者425例...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 93
Main Authors 平木, 幸治, 渡辺, 敏, 清水, 弘之, 井澤, 和大, 石山, 大介, 森尾, 裕志, 堅田, 紘頌
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.30.0.93.0

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Summary:【目的】 日常生活動作には,様々な身体機能が影響している.これらの各機能は,加齢に伴い低下し,歩行障害や転倒の原因となる.この変化は,75歳以上で加速的に低下するとの報告が多い.筋力に関しては,一定の歩行能力を有するための下肢筋力閾値について報告されている.しかし,筋力指標のみでは,歩行自立度の判定が困難な事があり,他の身体機能因子を併用することで,その判別精度が上昇する可能性がある.本研究の目的は,後期高齢入院患者を対象とし,筋力指標と簡便なバランス能力指標を併用し,歩行自立に必要なカットオフ値を抽出することである. 【方法】 対象は,20秒以上の立位保持が可能な75歳以上の入院患者425例(平均年齢81.7歳,男性65.8 %)である.不良な心血管反応を示す例,運動器疾患や認知症を有する例は除外した.測定項目は,歩行自立度,下肢筋力,バランス能力指標とした.歩行自立度は,歩行自立群(50 m以上連続歩行自立)と非自立群(監視もしくは介助を要する)の2群に選別した.筋力指標は,等尺性膝伸展筋力(KE)[kgf/kg]を採用した.バランス能力の指標は,前方リーチ距離(FR)[cm]と片脚立位時間(OLS)[秒]とした.なお,各測定は十分な練習を施した後,2回実施し,その最高値を採用した.統計学的手法は,Mann-WhitneyのU検定を行い,歩行自立群と非自立群間の各指標を比較した.歩行自立度に及ぼす因子を抽出するためにロジスティック回帰分析を行った.抽出された因子については,受信者動作特性曲線を用い,歩行自立のためのカットオフ値を抽出した.なお,統計学的判定の基準は5%とした. 【説明と同意】 ヘルシンキ宣言に則り,全例に対して,本研究の主旨の説明を行い,同意を得た. 【結果】 全425例中,歩行自立群は278例であった.また,歩行自立群は非自立群に比べ,KE(0.41 kgf/kg vs 0.28 kgf/kg),FR(31.8 cm vs 24.5 cm),OLS(11.0秒 vs 1.79秒)が高値を示した(p< 0.001).歩行自立度に影響を及ぼす因子として,KE,FR,OLSが抽出された(p< 0.001).歩行自立のためのカットオフ値は,KEが0.32 kgf/kg (感度79%; 特異度68%),FRが26.0 cm (感度94%; 特異度66%),OLSが3.2秒 (感度74%; 特異度77%)であった. 【考察】 後期高齢入院患者の歩行自立度には,KE,FR,およびOLSが影響を及ぼす因子であり,それぞれのカットオフ値が明らかとなった.以上より,後期高齢入院患者の歩行自立度を判定する際には,KE単独では判別困難であることが示された.
Bibliography:O2-15-093
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.30.0.93.0