肛門周囲膿瘍を合併したS状結腸癌の1例

S状結腸癌穿通による肛門周囲膿瘍を経験した. 直腸癌による肛門周囲膿瘍はまれに報告されているが, S状結腸癌による症例は過去に報告がない. 症例は51歳の男性で, 肛門部痛を主訴に来院した. 骨盤部CT検査で坐骨直腸窩膿瘍と診断し, 切開排膿術を施行した. 術前より腫瘍マーカーの上昇を認めていたため, 局所の炎症が改善した時点で大腸ファイバー検査などにより精査した結果, S状結腸癌との診断を得た. 全身麻酔下に開腹したところ, ほぼ全周を占める2型腫瘍が存在し, 潰瘍底が骨盤底へ穿通し, さらに肛門挙筋群を穿破して坐骨直腸窩に膿瘍腔を形成していることが判明した. S状結腸切除術を施行し, 手術...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 37; no. 10; pp. 1674 - 1679
Main Authors 木元, 道雄, 長田, 博光, 田中, 善宏, 足立, 尊仁, 横尾, 直樹, 白子, 隆志, 濱洲, 晋哉, 北村, 好史, 吉田, 隆浩, 岡本, 清尚
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.10.2004
一般社団法人日本消化器外科学会
The Japanese Society of Gastroenterological Surgery
Subjects
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.37.1674

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Summary:S状結腸癌穿通による肛門周囲膿瘍を経験した. 直腸癌による肛門周囲膿瘍はまれに報告されているが, S状結腸癌による症例は過去に報告がない. 症例は51歳の男性で, 肛門部痛を主訴に来院した. 骨盤部CT検査で坐骨直腸窩膿瘍と診断し, 切開排膿術を施行した. 術前より腫瘍マーカーの上昇を認めていたため, 局所の炎症が改善した時点で大腸ファイバー検査などにより精査した結果, S状結腸癌との診断を得た. 全身麻酔下に開腹したところ, ほぼ全周を占める2型腫瘍が存在し, 潰瘍底が骨盤底へ穿通し, さらに肛門挙筋群を穿破して坐骨直腸窩に膿瘍腔を形成していることが判明した. S状結腸切除術を施行し, 手術を終了した. 病理組織学的検査上, 高分化型腺癌であった. 腫瘍は, 固有筋層を越えていたが腹壁への癌細胞浸潤はなく, 根治的切除が可能であった. 肛門周囲膿瘍では, 本疾患を含めて悪性腫瘍が存在しうることも念頭におくべきであると考えられた.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.37.1674