循環器救急におけるChain of Survival

消防庁のまとめた平成14年度の“救急, 救助の現況”によれば, 全国で年間に4399195件救急車が出動し, 4192470人が医療機関に搬送された. そのうち88058例(2.1%)が院外心肺停止例(CPA)であり, 5年前より一万人以上増加している. その多くは心原性心肺停止であると言う. かかる症例に, より素早く対処し, 心肺機能を回復させ, 基にある心疾患の治療に繋げることができれば(chain of survival), さらに多くを救命できると推察される. 実際最近では, 現場に向かう救急隊員のPHSでの心肺蘇生法の指導と, 本年4月から可能となったAEDを用いた指示なし除細動の...

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Published in蘇生 Vol. 22; no. 3; p. 168
Main Author 田中啓治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本蘇生学会 10.10.2003
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ISSN0288-4348

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Summary:消防庁のまとめた平成14年度の“救急, 救助の現況”によれば, 全国で年間に4399195件救急車が出動し, 4192470人が医療機関に搬送された. そのうち88058例(2.1%)が院外心肺停止例(CPA)であり, 5年前より一万人以上増加している. その多くは心原性心肺停止であると言う. かかる症例に, より素早く対処し, 心肺機能を回復させ, 基にある心疾患の治療に繋げることができれば(chain of survival), さらに多くを救命できると推察される. 実際最近では, 現場に向かう救急隊員のPHSでの心肺蘇生法の指導と, 本年4月から可能となったAEDを用いた指示なし除細動の組み合わせによって, 救命され社会復帰できた症例を経験するようになった. しかし, 意識の無いCPA蘇生後の症例の予後を正確に予測し, いかに専門治療に結びつけるかは難題である. いたずらに脳死や植物状態を作り出してはならない. SSEP(Short-latency Somatosensory Evoked Potential)は蘇生直後に意識の回復を予測する良い指標の一つである. これに発症状況bystander CPRの有無, 除細動までの時間, 収容時のバイタルサインなどを組み合わせ, スコアリングなどを用いた詳細な判定の結果, 次のステップに進むことが必要と思われる. 蘇生後, 循環呼吸が保持され, 上記を満たしていたら, まず行うのは原疾患の治療である. すなわち急性冠症候群に対しては緊急冠動脈造影にて責任病変を明らかにし, PCI(percutaneous coronary intervention)を適応する. CPA蘇生後症例の緊急冠動脈造影所見はLMTや三枝病変を示すものが多く, 単純なreperfusion arrhythmiaというより重篤な冠動脈病変が基盤にあると考える. 従って, 緊急CABGを要することもあり, そこで正確な意識レベルの評価が極めて重要となる. 重篤なショック状態にあるときには積極的にPCPSを用いる. また, 頻発する致死性不整脈に対しては塩酸ニフェカラントなどのIII群薬を第一選択とし静注用のβ遮断剤も考慮する. PCPSは24時間後には短期型補助人工心臓(BVS5000;ABIOMED)に切り替え, 離脱困難であればさらに, より長期型の人工心臓に切り替える. 一方では蘇生脳症の防止対策として早期の低体温療法や高圧酸素療法を適応を検討しなければならない. また重篤な蘇生後脳症をきたした症例における家族の負担(家庭崩壊, 離婚などに発展)に対して社会的な保護や支援が必要となる. この様な“chain of survival”が円滑に繋がれば循環器救急はさらに大きく向上すると期待される.
ISSN:0288-4348