薬剤ならびにサプリメントによるミネラルの保健・予防・治療への処方‐内科領域における処方の実際

わが国では, 1960年~70年の高度経済発展優先の裏で環境中に過剰に放出されたメチル水銀やカドミウムなどの重金属によってもたらされた健康障害(いわゆる公害病), またミルクの製造過程で有害な砒素が混入して多くの乳児に重い後遺症を残した「森永砒素ミルク事件」など歴史的に不幸な出来事を経験しました. これらを契機にして, ヒトと金属の研究は, 主として環境汚染や中毒学の分野において先行し, むしろ日陰の花でありました. しかし, 近年生体内には多種類の金属が様々な濃度で存在して, 生命機能の維持に重要な役割を担っていることが次々と明らかにされ, 特に"微量元素(金属)の生化学的, およ...

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Published inBIOMEDICAL RESEARCH ON TRACE ELEMENTS Vol. 17; no. 2; pp. 241 - 242
Main Author 荒川泰行
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本微量元素学会 01.07.2006
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ISSN0916-717X

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Summary:わが国では, 1960年~70年の高度経済発展優先の裏で環境中に過剰に放出されたメチル水銀やカドミウムなどの重金属によってもたらされた健康障害(いわゆる公害病), またミルクの製造過程で有害な砒素が混入して多くの乳児に重い後遺症を残した「森永砒素ミルク事件」など歴史的に不幸な出来事を経験しました. これらを契機にして, ヒトと金属の研究は, 主として環境汚染や中毒学の分野において先行し, むしろ日陰の花でありました. しかし, 近年生体内には多種類の金属が様々な濃度で存在して, 生命機能の維持に重要な役割を担っていることが次々と明らかにされ, 特に"微量元素(金属)の生化学的, および栄養学的な機能, 欠乏症, 過剰症"などに関する学際的な研究発展とともに微量元素の重要性が広く注目されるようになりました. まさに, 微量元素に対する認識の負から正への転換が図られることになったと思います. 人体を構成する元素は, 多量元素(酸素, 炭素, 水素, 窒素, カルシウム, リン), 少量元素(硫黄, カリウム, ナトリウム, 塩素, マグネシウム), 微量元素(鉄, フッ素, 亜鉛, ルビジウム, ストロンチウム, 臭素, 鉛, 銅), 及び超微量元素(アルミニウム, カドミウム, ホウ素, バリウム, 錫, マンガン, ヨー素, ニッケル, モリブテン, クロム, コバルトなど)に大別されます.
ISSN:0916-717X