緩和ケアチームにおける作業療法の役割 癌のリハビリテーションにもとづくtotal pain relief approach

【はじめに】平成16年12月、当院は地域がん拠点病院の指定を三重県から受けた。それに先立ち当院では平成16年4月より緩和ケアチームが設立され、リハスタッフとしてはPT1名、OT1名が参加している。癌患者は病状の進行による体力消耗、手術・化学療法などの治療による安静臥床に基づく廃用症候群など多岐に渡る要因のためADLの低下を余儀なくされるが、作業療法では種々の治療・訓練法を選択し、病状の進行を予測しながらTotal pain の緩和にむけたADL向上アプローチを実施してきた。その内容は、Dietzによる癌のリハビリテーションステージに基づくものである。今回は、作業療法の緩和ケアへの関わりをtot...

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Published in日本農村医学会学術総会抄録集 p. 209
Main Authors 島上, 英里, 青木, 佑介, 田中, 一彦, 太田, 喜久夫, 米田, 愛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2005
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.54.0.209.0

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Summary:【はじめに】平成16年12月、当院は地域がん拠点病院の指定を三重県から受けた。それに先立ち当院では平成16年4月より緩和ケアチームが設立され、リハスタッフとしてはPT1名、OT1名が参加している。癌患者は病状の進行による体力消耗、手術・化学療法などの治療による安静臥床に基づく廃用症候群など多岐に渡る要因のためADLの低下を余儀なくされるが、作業療法では種々の治療・訓練法を選択し、病状の進行を予測しながらTotal pain の緩和にむけたADL向上アプローチを実施してきた。その内容は、Dietzによる癌のリハビリテーションステージに基づくものである。今回は、作業療法の緩和ケアへの関わりをtotal pain relief approachとして症例を通して報告する。 【緩和ケアチームの活動内容】主治医等からの依頼にもとづいて緩和ケア回診(評価、対策など)が実施され、緩和ケアチームとしての助言や指導が実施される。緩和ケアチームの構成メンバーは、麻酔科医2名、外科医1名、内科医1名、リハ医1名、精神科医1名、看護師10名、OT1名、PT1名、薬剤師3名、MSW1名、臨床心理士1名、管理栄養士1名の合計24名からなる。 【末期癌患者に対するリハアプローチ】リハセンターで対応した末期癌患者数の推移は、2002年度17名、2003年度20名に対し、2004年度は29名と増加した。緩和ケアチームの発足とともに末期癌患者へのリハアプローチが院内で認知された結果と推測している。また3年間のリハ実施末期癌患者(N=66)の転帰は、死亡27名(40.9%)、自宅退院25名(37.9%)、地域病院転院10名(15.2%)、ホスピス4名(6.1%)であった。全例OTアプローチが実施された。このうち、緩和ケアチームとして対応した例は2004年度で9ケースである。以下にtotal pain relief approach としての事例を紹介する。 【症例】71歳、男性。疾患名:左腎臓癌、左尿管癌、脊椎転移 機能障害:不全対麻痺(Th10)Frankel Type C膀胱直腸障害、腰痛、両下肢浮腫。ADL障害:ベッド上臥床状態で、食事、整容はギャッジアップ座位で自立。排泄(導尿・オムツ)、更衣、入浴は全介助を要した。心理的問題:病名告知されておらず、リハにたいしては腰痛や対麻痺の改善にて歩行再獲得を期待していた。 【方針決定】身体的疼痛に対しては、通常時はデュロテップパッチ7.5mg(オピオイド)を使用し、突発痛に対してはレスキューでコントロール可能であった。Total pain reliefに対する緩和ケアチームでの方針は以下のとおりである。 #1 座位時間の延長を行ない病棟内生活を車 椅子レベルで広げる。 #2 環境調整、リフター利用方法などの介助方 法の指導を進め、外泊を検討する。 #3 QOLの確保:趣味のパソコン操作の確立。 #4 リハ併設型ホスピスへの転院調整。 【考察】今回のケースは身体機能の悪化によりパソコン作業が困難となっていったが、車椅子座位からベッド上座位でのパソコン作業を安定した姿勢でできるpositioningなどの工夫に加え、作業療法士がパソコン操作学習での生徒としての立場を取ることにより、「パソコンの指導者の継続」という精神的支援につながりtotal pain reliefにつながった。   当院に緩和ケアチームが設立されたことにより、各職種による役割分担が明確になった。また緩和ケアにたずさわるスタッフの痛みに対する知識や、QOLに対する取り組みの重要性が理解され、院内での緩和ケアとtotal pain reliefとしてのリハアプローチに対する認識が向上した。
Bibliography:2D11
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.54.0.209.0