アルツハイマー型老年痴呆および正常老人の大脳皮質におけるソマトスタチン, ニューロペプチドY免疫活性陽性ニューロンについて
近年, アルツハイマー病 (以下AD) やアルツハイマー型老年痴呆 (以下SDAT) の病態と関連して, コリン神経系の変化が注目されている. その他, モノアミン, ソマトスタチン (以下SOM), P物質などの各種神経伝達物質または神経調節物質とされる内因性物質がAD/SDATでその含量が低下すると報告されている. 本研究では, そのうち, 大脳皮質の介在ニューロンとされるSOM陽性ニューロンについて免疫組織化学的にSDATと正常老人脳の大脳皮質を検討した. また, ヒト大脳皮質において, SOM陽性ニューロンの一部に共存するとされるニューロペプチドY (以下NPY) についても検討を試み...
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          | Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 23; no. 6; pp. 594 - 599 | 
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| Main Authors | , , , , | 
| Format | Journal Article | 
| Language | Japanese | 
| Published | 
            一般社団法人 日本老年医学会
    
        01.11.1986
     | 
| Subjects | |
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| ISSN | 0300-9173 | 
| DOI | 10.3143/geriatrics.23.594 | 
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| Summary: | 近年, アルツハイマー病 (以下AD) やアルツハイマー型老年痴呆 (以下SDAT) の病態と関連して, コリン神経系の変化が注目されている. その他, モノアミン, ソマトスタチン (以下SOM), P物質などの各種神経伝達物質または神経調節物質とされる内因性物質がAD/SDATでその含量が低下すると報告されている. 本研究では, そのうち, 大脳皮質の介在ニューロンとされるSOM陽性ニューロンについて免疫組織化学的にSDATと正常老人脳の大脳皮質を検討した. また, ヒト大脳皮質において, SOM陽性ニューロンの一部に共存するとされるニューロペプチドY (以下NPY) についても検討を試みた. 対象はSDAT3例と正常老人3例で, 死後12時間以内に, Nagai らの方法により摘出後灌流固定された脳を用いた. 検索した部位は前頭極 (Area 10), 中前頭回 (Area 9), 中心前回 (Area 4), 上側頭回(Area 22), Area 17である. 凍結切片について, 抗SOMモノクローナル抗体と抗NPY抗体を用い, ABC法で染色した. すべての切片をチオフラビンSで重染色を行い, 老人斑との関連を観察した. 抗SOM抗体で染色した切片については, そのSOM陽性ニューロンの細胞密度を調べた. その結果, (1) ヒト大脳皮質のSOM陽性細胞は大部分が多極性で, 一部双極性細胞, 錐体細胞がみられた. (2) SDATでは, 腫大したSOM陽性線維が多く観察された. この腫大した線維の20~30%が老人斑にみられた. また全老人斑の1~2%にSOM陽性の腫大した線維が観察された. (3) SOM陽性細胞の密度は, 検討した皮質領野のいずれについても, SDATと正常老人脳に明らかな差がみられなかった. (4) NPY陽性線維はSDATにおいて, SOM陽性線維と同様に腫大し, その20~30%が老人斑内に観察された. 以上より, SOM陽性線維とNPY陽性線維は, 老人斑の neurite の形成に関与していると推測される. | 
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| ISSN: | 0300-9173 | 
| DOI: | 10.3143/geriatrics.23.594 |