再生医療のためのドラッグデリバリーシステム

ドラッグデリバリーシステム(DDS)は, 必要な時に必要な場所に必要な量の薬を供給するのが理想的な姿である. 再生医療においては, 細胞の接着の足場の設計とともに, 細胞の増殖分化を助ける細胞成長因子の徐放制御は重要な課題である. 生体の細胞外マトリクスは, 種々の細胞機能を制御する物質(サイトカインなど)を保持し, 刺激によりその放出制御を行うことで, 組織形成, 再生に重要な役割を果たしており, まさしく高度なドラッグデリバリーシステムを実現している. 細胞外マトリクスの時間的, 空間的な細胞機能制御の分子機構が明らかになるにつれ, ナノバイオテクノロジーを駆使して生体システムと類似の機能...

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Published in日本再生歯科医学会誌 Vol. 3; no. 1; p. 63
Main Author 秋吉一成
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本再生歯科医学会 30.12.2005
Japanese Association of Regenerative Dentistry
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ISSN1348-9615

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Summary:ドラッグデリバリーシステム(DDS)は, 必要な時に必要な場所に必要な量の薬を供給するのが理想的な姿である. 再生医療においては, 細胞の接着の足場の設計とともに, 細胞の増殖分化を助ける細胞成長因子の徐放制御は重要な課題である. 生体の細胞外マトリクスは, 種々の細胞機能を制御する物質(サイトカインなど)を保持し, 刺激によりその放出制御を行うことで, 組織形成, 再生に重要な役割を果たしており, まさしく高度なドラッグデリバリーシステムを実現している. 細胞外マトリクスの時間的, 空間的な細胞機能制御の分子機構が明らかになるにつれ, ナノバイオテクノロジーを駆使して生体システムと類似の機能を有するバイオマテリアルや人工細胞外マトリクスの開発も進んでいる. また, 最近では, 細胞から細胞成長因子を分泌させる遺伝子導入法も試みられるようになった. 現在, 細胞成長因子の徐放化のために多くの高分子システムが開発されているが, 我々は生体吸収性のハイドロゲルに着目し, タンパク質の生物活性をそこなうことなくトラップし得る分子シャペロン機能を有する新規ハイドロゲルを設計し, その機能評価を行っている. 本講演では, DDSの概念の解説と再生医療における組織工学およびDDSの最近の研究について紹介する.
ISSN:1348-9615